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釣り人の悩み解決"神施設"に学ぶ「そこそこ起業」 「この価格でこのサービスはアリ?」から考える

東洋経済オンライン / 2024年12月17日 14時0分

設備の維持費、光熱費、人件費などランニングコストの合計と、一日あたりに持ち込まれる魚の合計から、「とりあえずこれくらいなら採算がとれる」という経営者の予想や、「これくらいの売上がほしい」という期待に基づいて設定された金額でしょう。

決して、「アジをさばく」という労力や技術そのものに150円の価値が備わっているわけではありません。

ただ、「とりあえず」であっても1匹150円という価格を設定することが大事なのです。この価格が提示されて初めて、お客さん=釣り人は「下処理してもらう価値があるかどうか?」を判断することが可能になります。

そして、「魚の処理をお願いします」とお客さんが依頼した時、「魚の下処理」にサービスとしての価値が発生するわけです。

「この価格でこのサービス利用する?」

「そこそこ起業」の実例の中には、ビル看板の広告費のように相場が定まっているものから、同人誌や自主制作のグラビア活動のように、価格そのものが曖昧なものが存在します。

後者のように、「ニーズがあるけど商品・サービスに明確な価格が存在しない」ものを商売にしていくためには、実はお客さんが買う価値があるかどうかを判断する「価格付け」をまず行い、サービスと金銭を交換する相場を作っていくことから始めていく必要があるのではないでしょうか。

設定した価格が「高すぎる」と言われれば、事業としての持続可能性と相談しながら金額を下げていき様子を見ていく。お客さんの要望を聞きつつ、その要望に応えるのに必要な手間から勘案して少しだけ値段を上げてみる。

趣味や生活に密着した分野で「そこそこ起業」を目指すのであれば、潜在的ニーズがどうとか、マーケティングがどうとか考えるより先に、とりあえず「この価格だったら、このサービス利用しますか?」と、身近な人に聞いてみて、一緒に相場を作っていくことが近道なのかもしれません。

ところで、私もキッチンカーを買って、釣り船の集まる漁港で「1キロ1000円」で釣った魚をさばいてみようと思うのですが、釣り人の皆さん、いかがでしょうか?

高橋 勅徳:東京都立大学大学院経営学研究科准教授

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