アサド政権崩壊後のリスクを排除するイスラエル 混迷を深める中東情勢、イスラエルの出方は
東洋経済オンライン / 2024年12月17日 8時0分
今回の奇襲攻撃を開始して以来、ジャウラニは本名のアフマド・シャラを名乗り始め、穏健な発言に終始している。側近は「ジャウラニは現実主義者で、アサド政権後のシリアを安定させるという1つの目標に集中している」と語っている。西側との対立は自らの破滅につながることを理解しているのだろう。
実際、アメリカは現時点でHTSをテロ組織に指定したままだが、見直しの可能性について言及している。アメリカ国務省のミラー報道官は「われわれは組織の行動をもとに、絶えず制裁に対する姿勢を見直している。したがって、組織が異なる行動を取れば当然、われわれの制裁姿勢も変化する可能性がある」と述べた。
イスラエルはHTSに懸念を示している。指導者ジャウラニは「ゴラン出身のアブ・ムハンマド」というもう1つのニックネームを持つ。
1967年の6日戦争(第3次中東戦争)で、彼の祖父母がそれまで住んでいたゴラン高原から追放されたことに由来している。ジャウラニは、2000年に始まった第2次インティファーダ(パレスチナ人の蜂起)に影響を受けたという情報もあり、イスラエルに対する今後の彼の言動に注視している。
アサドの亡命先となったロシアはどのような態度を示しているか。今回の亡命については、プーチン大統領が独断で決断したとペスコフ報道官が認めている。プーチンはロシア入りしたアサドと対面しておらず、今後もその予定はないという。
アサドはモスクワに少なくとも20戸以上の高級アパートを所有しており、推定で約20億ドルの資産を有していると言われる。妻と3人の子供と一緒にモスクワにいると見られるが、今のところアサド一家がロシア領内にいるという確定的な裏付けはない。
模様眺めのロシア
ロシアはシリア国内に軍事拠点を築いてきた。その中でも西部のフメイミム空軍基地、タルトゥース海軍基地は今後も継続して運営していく考えを明らかにしている。ロシアは2015年にシリア内戦に軍事介入し、アサド政権を支援してきた背景がある。
現在ウクライナ侵略によって十分な軍事力をシリアに投入できないロシアだが、シリアを通じて中東でのプレゼンスは今後も維持したいという思惑がある。クレムリンは、今後のシリア新政権の出方を見極めたい、といったところだろう。
シリアはイスラエルを国家として承認していない。イスラエルが建国されて以来、幾度となく戦火を交え、敵対関係にある。そんな中で、イスラエルがシリア国民に支援の手を差し伸べた知られざる活動がある。
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