1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

アサド政権崩壊後のリスクを排除するイスラエル 混迷を深める中東情勢、イスラエルの出方は

東洋経済オンライン / 2024年12月17日 8時0分

それは後に「良き隣人作戦」(Operation Good Neighbor)と呼ばれることになった。そもそもは計画的に実行された作戦ではなかった。

2013年、内戦で傷ついたシリア市民7人がイスラエルの国境付近に近づいてきたとき、現場にいたイスラエル国防軍(IDF)部隊が地域の病院に搬送し、治療を施したことに端を発している。

シリア内戦は、国連のゴラン高原国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)へ危害が及ぶほどに激化し、1996年から参加していた日本の自衛隊も2012年に撤退した。

その後ロシアが軍事介入したことにより、戦いは熾烈を極めた。イスラエルとの国境付近の町クネイトラでは水道や電気が止まり、医療施設は破壊され、住民は絶望の淵に立たされた。

2016年6月、IDFは秘密裡に行っていたシリア国民への支援活動を本格的な作戦として始動させた。それが「良き隣人作戦」だった。

翌年7月まで公式に発表されることのなかった秘密の作戦だった。人道的観点からだけではなく、シリア人のイスラエルに対する敵対心を緩和させるという戦略的な狙いもあった。

イスラエルは野戦病院を設置し、増え続ける患者に対応した。この作戦はアサド政権がシリア南部を制圧した2018年9月まで続けられた。

2年あまりで1300人以上の子どもを含む4000人以上のシリア人に医療を提供してきた。ここで生まれた子どもも数百人にのぼるという。

医療行為だけではなく、食料1700トン、医療品2万6000箱、衣服35万トン、燃料110万リットルなど、さまざまな支援物資を提供した。

イスラエルのネタニヤフ首相は、シリアでアサドの独裁政権が倒れたことについて、イスラエルにとって新たな機会が訪れるチャンスになると述べたが、同時にリスクが伴うことも言及した。

脅威を除き平和を模索する

「1974年に合意された緩衝地帯は崩壊し、シリア軍が撤退したことにより、イスラエルへの脅威が増している。そのため、IDFは緩衝地帯とその付近に展開した。いかなる敵対勢力もここに拠点を築くことを許さない」

イスラエルは「バシャンの矢作戦」を実行し、これまでシリア国内の300以上の軍事目標を攻撃し、シリア軍が残していった戦闘機、弾薬庫、ミサイル基地などを破壊した。

こうした武器が新勢力に渡るのを阻止し、シリアへの足がかりを得ようとするイランの試みを挫き、ヒズボラへの武器供与を阻むのが目的である。

さらにイスラエルは「シリア国内の戦闘には介入せず、イスラエルとゴラン住民を守るために行動する」と強調している。ネタニヤフ首相はかつての「良き隣人作戦」にも言及し、「イスラエルと平和に暮らしたいと願う人々に平和の手を差し伸べる」と述べている。

イスラエルは、自国の安全を脅かす存在に対しては一切妥協しない。その一方で、平和を願う人とは共存していく意志を表明している。

谷内 意咲:ミルトス代表

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください