中国自動車市場で「売れ筋価格帯」が下がる裏側 政府の「買い換え補助金」が消費者心理に影響
東洋経済オンライン / 2024年12月18日 18時0分
中国自動車市場で、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の売れ筋価格帯が目に見えて下がりつつある。その裏にあるのは、中国政府がマイカーの買い替えを促進するため導入した補助金の影響だ。
【写真】3年間のローン金利免除を打ち出した理想汽車のウェブサイト
2024年4月以降、中国政府は国内景気のテコ入れを目的に上述の買い換え政策を拡充してきた。排ガス対策や燃費性能が劣る旧型車を廃車にして新車に買い換えた場合、EVやPHVを購入すれば2万元(約41万円)、低燃費のエンジン車ならば1万5000元(約31万円)の補助金が支給される。
安いEV・PHVほどお買い得
旧型車を(廃車にせず)下取りに出して買い換える場合にも、地方政府から補助金が出る。金額は地方によりまちまちだが、EVやPHVへの買い換えは平均1万5000元、低燃費のエンジン車は同1万元(約21万円)ほどだ。
これらの補助金はEV・PHVとエンジン車で支給額が異なる一方、大衆車と高級車の支給額には差がない。言い換えれば、消費者にとっては車両価格が安いEV・PHVの買い得感が最も大きく、低・中価格帯のEV・PHVの販売にとって強力な追い風になっている。
自動車販売の業界団体である乗用車市場信息聯席会(乗聯会)のデータによれば、中国市場で2024年上半期(1~6月)に販売された乗用車の平均価格が18万6000元(約384万円)だったのに対し、同年10月の平均価格は16万8000元(約347万円)と約1割下がった。買い換え補助金の導入とともに、新車販売に占めるより安価なクルマの比率が上昇したためだ。
その恩恵を最も大きく受けているのが、中国のEV・PHVの最大手である比亜迪(BYD)だ。低・中価格帯のクルマが主力の同社は11月の販売台数が50万台を突破し、過去最高記録を更新した。
同じく低・中価格帯を主力にするEV大手の広汽埃安(広汽アイオン)は、11月に4万2000台を販売。新興EVメーカーの中で価格性能比への評価が高い零跑汽車(リープモーター)は同4万台、小鵬汽車(シャオペン)は同3万台を販売し、いずれも過去最高を記録した。
高級車メーカーは苦戦
対照的に苦戦が目立つのが中・高級車だ。乗聯会のデータによれば、買い換え補助金の導入前の2023年には、メーカー希望価格が30万~40万元(約620万~826万円)のクルマが新車販売台数の10%を占めていた。だが、この比率は2024年10月には7.9%に低下。40万元を超える高級車の比率も同じく下がりつつある。
例えば、新興EVメーカーの中でも高級路線をとる理想汽車(リ・オート)は、2024年1月から11月までの販売台数が44万2000台にとどまり、年間50万台の目標達成が危ぶまれている。同社のラインナップには希望価格が20万~30万元(約413万~620万円)の車種が1つしかなく、その他はすべて30万元を超える。
そんな中、理想汽車は2024年末までにクルマを購入した顧客に対して、ローン金利を3年間ゼロにするキャンペーンを始めた。値引きを抑えて高級イメージを維持しつつ、販売をテコ入れするための苦肉の策とみられる。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は12月2日
財新 Biz&Tech
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