基地局を「AIの頭脳」へ変えるソフトバンクの挑戦 1台で20基地局制御、夜間はGPUをAI計算に転用へ
東洋経済オンライン / 2024年12月18日 10時0分
ソフトバンクが、通信技術の世界で新しい一歩を踏み出した。携帯電話基地局の制御とAI処理を同一コンピューター上で実現する新技術を開発。従来は基地局制御に専用機器が必要だったが、AI処理用の最新GPU(画像処理プロセッサー)による代替で機能を集約し、通信需要が低い夜間には同じ設備でAI処理を行う。
【写真で見る】不審者を追跡するロボットをデモンストレーションをして、低遅延通信の有用性を示した
「通信事業者の設備投資効率を大きく改善できる」。ソフトバンク 先端技術研究所の野崎潔氏はこの技術の意義をこう説明する。
基地局設備をAI処理の基盤に
「AI-RAN」と名付けられたこの技術は、基地局の無線制御(RAN:Radio Access Network)とAI処理を統合する。RANは携帯電話通信を制御するシステムで、従来は専用機器で構成されていたが、ソフトバンクはNVIDIA社の最新GPU「GH200 Grace Hopper Superchip」で代替し、1台のサーバーで20の基地局を同時制御する。
通信品質については、実証実験で100台の端末による同時通信を行い、CPUとGPUの使用率を詳細計測して携帯電話網に必要な安定性(キャリアグレード)が確保できると確認した。基地局制御に通常のクラウドサーバーにはない一定以上の性能と安定性が求められるが、新技術でこれを満たしたということだ。
複数の基地局を1台のサーバーで制御することで、効率化も実現している。現状では1基地局あたり25ワットの消費電力だが、制御する基地局数を40に増やせば半分以下まで低減しできるという。低消費電力なArm社のCPUを採用したことも電力効率の改善につながった。
ソフトバンクはこの技術を「AITRAS(アイトラス)」として製品化し、10年以上前から通信業界で提唱されてきたMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)の実用化技術として位置付ける。
MECは携帯電話網内で近接でデータ処理する手法で、クラウド送信不要のため低遅延サービスを実現する。
AIリソースを最適配分する「オーケストレーター」
AITRASの中核を担うのが「オーケストレーター」と呼ぶ制御ソフトウェアだ。全国の基地局設備を一元管理し、通信需要とAI処理需要に合わせてGPU用途を最適に振り分ける。従来、通信用とAI用で別々に必要だった設備を統合することで、設備投資の効率化が図れる。
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