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「社員を監視するテクノロジー」が導入される恐怖 「支配される人」ばかり監視されるディストピア

東洋経済オンライン / 2024年12月20日 11時0分

頭を1つ切り落とすと2つ頭が生えてくるという、ギリシア神話のヒュドラの現代版と言える電子メールの受信箱に取り組んでいるはずの被雇用者が、レシピを眺めていたりしないように、コンピューター画面のスクリーンショットを定期的に撮影するテクノロジー……。

中国の「社会信用システム」

このようなディストピアのような監視制度は、権威主義的な国々ではなお悪い。たとえば中国では、「社会信用システム」が国民を常に監視して、「不適切」な行動をすべて罰することを目指している。

現時点では一連のパイロットプロジェクトとして存在しているこのシステムは、早くも不穏な様相を呈している。

1300万人がすでにブラックリストに載せられており、彼らは飛行機のチケットを予約することも、列車の切符を買うこともできない。

交通規則や信号を無視して道路を横断すると、顔認識ソフトウェアで自動的に身元を突き止められる都市もある。そして、その人の顔が巨大な掲示板に表示され、たちまち恥ずかしい思いをさせられる。

一部の地域では、共産党の定めた規則を破った人は誰もが、警察が撮るような顔写真を、その地域でSNSを使っている人の画面に表示され、デジタルの世界で排斥される。

中国のメッセージングアプリの微信(ウィーチャット)では、ブラックリストに載せられた石家荘(シージャーヂュアン)市の人は、地図上に示される。

それと比べれば、ジョージ・オーウェルが『一九八四年』で想像した監視国家の「テレスクリーン」もまだ趣があって気楽なもののように見えてくる。

何が問題かと言えば、現代の私たちの監視制度は、万事逆向きなのだ。だから、逆転させるべきだ。

私たちは見当違いの人々を監視している。21世紀のパノプティコンはひっくり返して、逆に、権力を握っている人が絶えず監視されていると感じるようにするべきなのだ。

エネルギー大手のエンロン社が経営破綻したり、バーナード・マドフのマルチ商法が行き詰まったりしたのは、平社員がペーパークリップをいくつか盗んだからでも、勤務時間中に20分ほどYouTubeで猫の動画を眺めていたからでもない。そうした平社員を支配している人自身が、悪質な振る舞いをし、途方もなく大きな害を招いたからだ。

さまざまな推定によると、ホワイトカラー犯罪は、アメリカだけでも毎年2500億〜4000億ドルの損失や損害を引き起こしているという。

アメリカの街中で行われる不法侵入、強盗、窃盗、放火といった財産犯の被害額をすべて足し合わせても170億ドルをわずかに上回るだけであり、ホワイトカラー犯罪の損害はその15〜25倍の額に達する。

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