炎上会見で露呈、期待が迷走に変わった日大改革 焼け跡から再建を果たした「中興の祖」が源流に
東洋経済オンライン / 2024年12月20日 11時30分
3首脳が開いた会見の席上、理事長の林は日大の初期対応について次のように自ら語った。
「酒井学長、調査をした澤田副学長は適切な対応をしたと考えております」
それが文字通りの「炎上会見」となった。日大の3首脳は騒ぎを最小限に抑えようとしたつもりかもしれない。だが現実には、彼らの甘い見立てとは真逆にことが進み、警視庁が大麻を吸った4人の部員たちを次々と立件していく。順風満帆の大学改革をアピールしてきた林たち日大執行部は狼狽え、もはや収拾がつかなくなっていった。挙句、会見後まもなく記者会見に臨んだ3首脳は仲間割れした。理事長の林一人が大学に残り、学長の酒井と澤田が大学を去る羽目になる。
日大の天皇「古田重二良」
日大帝国と呼ばれ、絶対的な権力者として君臨してきた元理事長の田中英壽が一連の事件で一敗地にまみれて大学を去ったあと、人気作家の林が火中の栗を拾い、大学の再建に取り組んだ。当初、世間は概ねそう好感を持ってきた。だが、日大という巨大組織を運営するのはたやすくはない。
日大という日本一のマンモス私大を知るうえで、田中と林のほかに忘れてならない人物がいる。かつて日大の天皇として名を馳せた古田重二良(じゅうじろう)である。もともと早稲田や慶応と並び明治の国策高等教育機関として創設された日大は、法律専門学校からスタートした。太平洋戦争が始まると他の私学と同じく、学生たちを戦地に送り出している。米軍機による日本本土の空襲がキャンパスを焼き尽くし、終戦後は廃校の危機に瀕した。
古田はそんな激動のさなかに日大トップに就く。戦火にまみれてキャンパスの大半が焼失し、ゼロから大学の再建を果たした。まさしく日大中興の祖である。
古田の大学運営はエリート学生の養成に力を注いだ早稲田や慶応のそれとは質を異にした。古田は終戦後、自ら新設した会頭ポストに座ると、大学の拡大路線に突き進んだ。そして戦前の法律学校から脱し、医学部や工学部、文学部などを加えて日本最大のマンモス大学を築いた。
保守思想の持ち主でもあった古田は、戦後の日本復興期に日本政府中枢や右翼団体と一体化して私学助成制度の新設を働きかけた。日大幹部や学生のあいだで、古田の盟友として知られたのが、佐藤栄作である。
高度経済成長期に首相に就いた佐藤は、古田が日大会頭として結成した右翼・保守団体の「日本会」会長となり、大学の後ろ盾となる。日本会は日本の再軍備を唱える現在の日本会議の原型ともいえ、反共組織として日米安保反対運動を展開する左翼学生と対峙した。日本会には自民党保守派の錚々たる顔ぶれが名を連ね、暴力団組織に通じるネットワークがあった。
ボディガードから理事長へ
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