「情弱な被害者ではない」闇バイト応募者の本性 「だまされた普通の人々」は作り上げられた虚像である
東洋経済オンライン / 2024年12月20日 13時0分
しかし、その週刊誌はすでに「普通の母親がこんなことを!」というストーリーを作って報道をしたかったようで、心理学的な事実などはどうでもよかったとみえ、私のコメントは誌面には掲載されなかった。
いつもながらの「ストーリーありき」の報道姿勢には呆れるばかりである。したがって、ここでは、私がなぜ闇バイトに応募する人々を「普通の若者」「普通の母親」ではないと考えるのか、それを説明したい。
「闇バイト」に応募する心理とは?
第1に、普通の人々なら、仮に金に困っていたとしても、SNSなどで素性のよくわからない求人情報を見てバイトを探すということはしない。ましてや、匿名性の高いサイトに誘導された時点で、相当な不審感を抱くはずである。
そもそも、「楽して儲かる仕事」などそう簡単にあるわけはないし、怪しいうたい文句を見ると、そこでも「不安」のシグナルが鳴って「このような仕事にはかかわらないほうがよい」と思うはずである。このように、応募するまでの段階でも、心理的ハードルがいくつもある。
しかし、だまされやすい人や鈍感な人はどこにもいるわけで、こうした不安のシグナルが鳴らずに飛びついてしまった軽率な人々は一定数いるだろう。ただ、その後にもう一段大きな心理的ハードルがある。つまり、犯罪の実行である。
応募した後に、仕事内容を聞かされ、「ブラック案件」、あるいは「犯罪」とわかった時点で断ったり、逃げ帰ったりするのが「普通の人」である。事実、闇バイトに応募した何人かは「自分にはできない」と逃げ出している。
しかし、実行にまで至った人々は、そこでも思いとどまることなく、心理的ハードルを乗り越えて、残虐な犯罪行為を遂行したわけである。
生理的なブレーキが働くのが「普通の人」
メディアでは、身分証明書の写しなどの個人情報を相手に送っていたため、素性を指示役に把握されていて、逆らうことができなかったと報じられている。
しかし、指示役にいくら脅されても、人を殴ったり、死に至らしめたり、金銭を奪ったりすることには、「普通の人」なら、生理的なブレーキが働き歯止めがかかるはずである。人間とはそういうふうにできているのだ。
一方、生理的な歯止めが利かず、法律を破ることや人を傷つけることに抵抗感がない人々が一定数おり、彼らに共通しているのは、「反社会的パーソナリティ」を有していることだ。程度の差こそあれ、事件に加担した人々のほとんどが、こういう問題を抱えた人々なのだと推測できる。
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