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誰が本当の夫?「清少納言の夫」のさまざまな説 夫の1人と言われている橘則光には物騒な話も

東洋経済オンライン / 2024年12月21日 12時30分

「やれやれ……」と思っているところに、またもや男性が現れます。まるで格闘ゲームのようです。

新たな男性は「小癪な奴め、逃さんぞ」と言い、襲いかかってきました。「今度こそはダメか。神仏よ、助けたまえ……」、そう則光は祈りつつ、太刀を持ちます。

男性は太刀を振りかざし、則光を斬ろうとしますが、近すぎて、則光を斬ることができません。

太刀を鉾のように持っていた則光は、近づいてきた男性の腹に太刀を刺し、男性の腕をも切り落とすのでした。

まだ誰かいるのかと則光は辺りを見回しますが、誰もいません。小舎人の童はどうしたのかと思い、来るのを待つ則光。童は泣きながら、通りを歩いていました。

呼びかけると、すぐにこちらにやって来ます。則光は童に命じ、宿舎から着替えを持ってこさせます。血のついた衣服を脱ぎ、新しいものに着替え、宿舎に戻り、則光は眠りにつきます。

しかし、寝ている間も彼は「今日のことが私の仕業と知られたらどうしよう」と案じ、熟睡することはできませんでした。

夜が明けると案の定「大男が3人も斬られているぞ」「余程の使い手か」「皆、同じ太刀で斬られている。盗賊と間違えられたのか」と人々が集まり、騒ぎ出しました。

渋々見に行ったところまさかの光景

則光も仲間から見物に行こうと誘われます。行くのは嫌でしたが、行かないというと疑われると思ったので、渋々、見に行きます。

現場には、男性たちの死体が昨日のまま転がっていました。その現場で髭を生やした30歳頃の男性が、手を振りつつ、あれこれ言っているのを目にしました。則光がその声を聞くと、3人の男性たちを殺したのは自分だと主張していました。

目が血走り、髪は赤く、鼻が垂れ下がっている30代の男性は、貴族たちに「盗賊かと思い、退治しました。が、よく見れば、日頃から私のことを付け狙っている者でございました」と説明していました。

男性の説明を聞いていた則光はおかしくて仕方なかったのですが、自分のやったことがバレないと思い、嬉しく思ったというのが、この話の結末です。清少納言の夫が武勇に秀でていたことがわかります。

(主要参考・引用文献一覧)
・岸上慎二『清少納言』(吉川弘文館、1987)
・繁田信二『殴り合う貴族たち』(柏書房、2005)

濱田 浩一郎:歴史学者、作家、評論家

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