強引なメジャー移籍でプロ野球「空洞化」の危機 球団とエージェントの関係の見直しが必要
東洋経済オンライン / 2024年12月21日 9時0分
選手とエージェントの関係は、個々にバラバラで濃淡があるが、今や多くの選手がエージェントと何らかの関係を持つようになっている。
しかし、こうした状況をプロ野球球団は「必ずしも好ましい状況ではない」と見ている。
プロ野球選手は「個人事業主」ではあるが…
プロ野球選手と球団は「雇用契約」ではなく「業務委託契約」を結んでいる。選手は「社員」ではなく「個人事業主」だ。間にエージェントが入るのは、何の問題もないはずだが、球団の多くは抵抗感を抱いているはずだ。
選手は「個人事業主」かもしれないが、球団は「選手寮」を設けて、若手選手を集団生活させている。寮には「寮長」がいて、選手の生活全般を管理している。トレーニング施設が併設され、選手は、いつでも練習ができる。また栄養バランスの取れた食事も提供するし、何不自由のない生活を送ることができる。
実態として、日本のプロ野球選手は、その球団に「就職」したようなものであり「社員」のようなものだった。特に若手選手は、社会人として未熟だ。「選手寮」で生活するような選手は、球団が「管理、教育」しているという認識だったのだ。エージェントは、見方によっては「選手につく悪い虫」のように見えかねないのだ。
例えば独立系のトレーニング施設でNPBの選手がトレーニングしている模様を取材しても、球団から「うちの選手の名前を出さないでくれ」と言われることが多い。そうした報道が「球団のトレーニング環境に選手が物足りなさを感じている」ように受け取られるのを恐れているのだ。
公正取引委員会が弁護士限定の代理人制度に警告
球団は、選手との契約交渉に代理人(エージェント)が介在することも永年禁止してきた。選手に入れ知恵をされるのは迷惑だ、というところだ。しかしプロ野球選手会の要求にこたえる形で2000年オフから代理人制度を認めた。
しかしその制度は、
①代理人は日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限る。
②一人の代理人が複数の選手と契約することは認められない。
と厳しい制約があった。
今年9月、公正取引委員会は「日本プロフェッショナル野球組織に対する警告について」と題する警告を行った。その内容は次のようなものだ。
⑴ プロ野球組織について、以下の事実が認められた。
ア プロ野球組織は、構成員である球団に対し、選手契約交渉の選手代理人とする者について、弁護士法(昭和24年法律第205号)の規定による弁護士とした上で、各球団に所属する選手が、既に他の選手の選手代理人となっている者を選任することを認めないようにさせていた。
イ プロ野球組織は、令和6年9月2日、前記アの行為を取りやめる旨を決定(注2)した。
(注2)公正取引委員会が本年8月から審査を開始し、前記アの独占禁止法違反被疑行為について問題点を指摘し、早期の取りやめの検討を求めたことを受けて行われたものである。
⑵ プロ野球組織の前記⑴アの行為は、独占禁止法第8条第4号に該当し、同条の規定に違反するおそれがあることから、公正取引委員会は、プロ野球組織に対し、今後、前記⑴アと同様の行為を行わないよう警告した。
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