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「機械に介護されたい」89歳のIT強者が描く"老後" シニアは「0から1を創る」ことを生きがいにしよう

東洋経済オンライン / 2024年12月23日 9時0分

シニアのニーズを反映すべきは、シニア用製品に限ったことではない。たとえば、公共公益施設の仕様もそうだ。

若宮さんはわかりやすい例として、駅のトイレの荷物用フックをあげる。シニアにはフックの位置が高くて、届かないのだ。トイレに入ってから、バッグをかけられないとわかったときの絶望感はどうしてくれようと思う。

「年寄りはトイレの利用者として想定外なのでしょうか? 音が出たり自動水洗だったり、いっぱい機能がついているんだから、フックくらいケチケチしないで高さを変えて2つくらいつけたっていいじゃないと思います」

高齢者向けの「スマホの使い方講座」は無駄

高齢者問題を考える政府の会合では、「とにかく80代後半になったら、耳がまともに聞こえないのが当たり前なんです」という話をしたことがあった。出席者の1人は、さっそく厚生労働省の専門家に若宮さんの話を確認したらしく、後日、「なるほど! 耳が遠くなるんですね」と若宮さんに報告してくれたとか。

「政府の会議も、まだこのレベルなんですよ。高齢者のこと、非常にわかっていません」

若宮さんは苦笑するが、まったくめげていない。

デジタル化社会の波は止められない。無人レジを設置するスーパーが増え、役所の公的手続きもオンライン化の流れだ。それは進みこそすれ、後戻りはないと若宮さんは言う。自治体は、人口が多いシニア世代にもっとスマートフォンの機能をマスターしてもらって、オンライン化に移行させたい。若宮さんも大賛成だ。

「でもね、役所が高齢者にスマホを使ってもらうために考えるのは、いつも“スマホの使い方講座”なんです。この発想が少々ズレています。大事なのはスマホとはそもそもどういうもので、どんな風に使えば暮らしが楽しく、便利になるかを知ってもらうことだと思います。使う用事がないから、使い方もすぐ忘れてしまうんです。

出かけるときは財布よりスマホが必需品の若者と違って、高齢者は別にスマホがなくても困りません。スマホ教室に参加したおばあちゃんが、『今日、スマホの使いかたを習ったよ』って自宅の固定電話から娘に報告して、おしまい(笑)」

講師がマニュアルに沿って「ホームボタンを押してみましょう」と言って、全員が一斉にボタンを押す­­――。そういう画一的な教え方ではなく、散歩が好きな人には地図アプリの使い方を、離れて住む孫とおしゃべりしたい人にはビデオ電話の使い方を。

若宮さんが提案するのは、楽しいことからスマホになじんでもらう講座である。親にスマホの使い方を教えるといつもケンカになるという皆さんも、ぜひ頭に入れておきたい。

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