「頑張れる人」を無理に休ませてはいけない理由 「疲れるくらい楽しい」フェーズをどう過ごすか
東洋経済オンライン / 2024年12月23日 8時40分
ただし、人には「頑張りたいフェーズ」もあります。ですから、頑張っている人に対して、無理に「疲労しているよ」と気づかせようとすることは危険な場合があります。
気づかなければ、もっと頑張れたはずなのに、余計な一言のおかげで、自分が疲れていることに気づいてしまい、バーンアウトしてしまうということがあるのです。
自分の世界観だけで相手のことを見て、「どう見ても頑張りすぎ」と感じたとしても、実は、その人は「頑張れる器」のある人で、今はまだ、疲れていることに気づいてはいけないタイミングなのかもしれません。
東洋医学的には「先天の精」と言いますが、人によって、受け継がれている気の強さ、弱さがあるのです。
無理に休ませようとせずに、頑張らせてあげることも周りの大切な役目であり、多様性のある社会のあり方でもあるでしょう。
パーソナルトレーナーとしても、また、子育て中の親としても思うのですが、教える側は「自分が上がろうとする人」を教えていかなければなりません。時期の早い遅いではなく、その人の経験にもよりますし、タイミングもあるでしょう。
教え子には、「あなたたちができることは、井戸の中に入って手を入れることではなく、上がってこようとしている人の手を引くことだ」と伝えています。
特に、思春期は井戸の中に深く潜りに行く時期ですし、私自身、自分の子供にも手が届かなくなって、何もできないと感じることがありました。
人は、小さな井戸から出て、また違う井戸に入るということをくり返します。学び方も積み重ねも、それぞれ自由でいいと思うのです。
学びや気づきをいつ手に取るかは、本人に決定権があります。だから、その人に決めさせてあげることが愛だとも考えています。
「いい加減が良い加減」
私の座右の銘は「いい加減が良い加減」です。そう言えてしまうほど、かつての私はまったく加減のできない、とにかく頑張って生きていた人間でした。
「自分は疲労していた」と思うと、今度は「疲労してはいけない」と思ってしまう。でも、実際には、疲労するぐらい楽しくやっていたのです。
本当はやりたかったはずのことを、ちょっといきすぎてやってしまっただけ。だから、立ち止まって、自分の「良い加減」を探しましょうという考えです。
そのためには、「感じること」が必要です。
みなさん「何をすれば痩せるのか」「どうすれば体が硬くなくなるのか」という方法論ばかりを求めますが、まずは自分の体の状態を感じることができなければ、無理な話なのです。
疲労は「疲れを労う」尊い言葉
疲労という言葉が、また違った言葉として出てくるといいのだろうと思います。
疲労と疲弊では、大きく意味が違いますし、疲労は、ただ「疲れた」というだけの言葉ではなく、「労(ねぎら)う」という言葉が入っているように、実は素晴らしい意味があるのです。
実際、疲労がなければ眠れません。でも、「疲」のやまいだれのイメージに引っ張られてしまいがちですよね。
本来の言葉の捉え方が、いい形でちゃんと伝わっていけばよいなと思います。何事も、見方ですから。
本書のように「休養学」という学問として広めていくことはとても大事なことです。日本の教育体制では、まだまだ間に合わない部分もありますから、民間からも取り組んでいく必要があるでしょう。
(構成:泉美木蘭)
星野 由香:パーソナルトレーナー
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