いつの間にか消えた「NTT法廃止論」、空転の裏側 政治に振り回された議論が浮き彫りにした難題
東洋経済オンライン / 2024年12月23日 7時40分
とりわけ光ファイバー網は他事業者のビジネスにとっても不可欠な設備で、KDDIを筆頭とする競合他社は、こうした「特別な資産」の取り扱いをめぐる規制緩和に強く反対してきた。答申案では意見を反映する形で、NTTが線路敷設基盤を譲渡や処分する際には認可を必要とするよう、制度を見直す内容が盛り込まれている。
規制緩和による統合論が浮上していたNTT東日本、NTT西日本についても、分離の維持が適当であるとの結論が示された。さらに答申案は、公正競争に影響を及ぼす可能性が高いグループ会社の合併や再編について審査の対象にするよう求めた。
NTTは2020年にNTTドコモを完全子会社化し、当時競合からは「独占回帰だ」などと反発の声が上がっていた。こうしたNTTグループの市場支配力の強大化を懸念する声を踏まえた格好になる。
政府の株式保有義務は「維持」
そもそもNTT法見直しの議論は、増大する国の防衛財源を確保する観点から、政府によるNTT株保有義務の見直し案が浮上したことをきっかけに始まった。ところが答申案には、その政府の株式保有義務について「維持が適当」とあっさり明記された。
注目を集めた制度改正の法形式については、「総務省で検討することが適当」として、結論を明示していない。ただ、NTTに対する規制の現状維持、強化の内容が目立つことからもわかるように、法廃止のような抜本見直しに至る内容でないのは明らかだ。NTTの島田明社長も10月29日の有識者会議に出席後、「今の段階では廃止は無理だろう」と認めている。
最終答申案は2025年1月8日まで意見を公募したうえで、必要な修正を経て総務省に提出される。総務省は答申を踏まえ、通常国会に関連する改正法案を提出する見通しだ。
法案提出に当たっては、総務省と与党側で調整が行われるが、12月3日の自民党会議では、「国際競争力確保などで意見が出たものの、答申案の方向に大きな反対はなかった」(鈴木英敬・特命委事務局長)。目立った波乱はないまま、制度改正が進みそうな情勢となっている。
一時は法廃止にまで持ち込む勢いで話が進み、国内の通信政策に大きな転換点をもたらすとの見方もあった今回の議論。この1年で、竜頭蛇尾の経過をたどったのはなぜなのか。背景にあるのは、政治力学の変化だ。
当初、自民党の議論を主導したのは、「法廃止のウィル(意思)を持つ」(総務省幹部)とされる2人の大物政治家だった。元政調会長の萩生田光一氏と、特命委の前トップを務めた甘利明氏だ。
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