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「セブン買収合戦」、創業家の9兆円MBOに黄信号 2025年2月中に買収したいが、資金集めに苦戦か

東洋経済オンライン / 2024年12月23日 7時35分

もはや国家プロジェクトレベルのMBO。伊藤順朗副社長ら創業家は来年2月までの買収完了を目指していたが、足元で実現が疑問視されている(撮影:今井康一)

カナダのコンビニ世界大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングス。11月にはセブン&アイ副社長である創業者の次男の伊藤順朗氏と、大株主で、伊藤氏ら創業家が役員を務める資産管理会社・伊藤興業からも対抗提案を受けていることが明らかになった。

【写真】前代未聞の規模の金策…うまく進むのか?

社外取締役で構成される特別委員会では、どちらの提案が企業価値の向上や少数株主の利益に資するのかを検討し、取締役会に答申する。現在も協議が続いている。

創業家が提案する買収額は9兆円とも伝えられている。実現すれば国内のMBO(経営陣の参加する買収)案件としてはもちろん、日本企業による買収としても史上最大規模だ。

まだ足りない「自己資金」

MBOはいつ実現するのか。創業家陣営の関係者は「2025年2月の完了が1つのターゲット」と明かす。セブン&アイ関係者も「それくらいのスピード感でないと、クシュタールに対抗できないだろう」と指摘する。

クシュタール陣営は現状、敵対的買収には慎重な姿勢を示しており、クシュタールの態度が変わる前に、MBOの実効性を高めたい考えだ。

しかし、足元で「2月中の完了は厳しい」と明かす関係者も増えている。課題となるのは、やはり9兆円の「金策」だ。

多くのMBOでは、自己資金(エクイティ)だけでなく、対象会社の資産やキャッシュフローを担保として借り入れる「レバレッジドバイアウト」(LBO)など、外部資金も活用する。資金をすべて自前で用意することが難しいだけではなく、高い投資効率が期待できるからだ。

今回の創業家による買収提案もLBOの手法をとる見通しだ。詳しくは後述するが、銀行団が巨額の融資を調整中だ。

一般的にLBOでは買収資金の3~4割をエクイティでまかなうケースが多い。9兆円の買収となれば、3兆円前後の自己資金が必要だ。が、事情をよく知る関係者の多くが「まだエクイティが足りておらず、2月中の完了は厳しいだろう」と指摘する。

ブルームバーグのビリオネア指数によれば、伊藤家の総資産は約7400億円と推定されている(2024年12月時点)。その多くをセブン&アイの株式が占め、伊藤興業は同社株を8.16%、伊藤副社長個人も1%の株式を保有している。今回の買収において、伊藤家が自腹を切れるのは1兆円程度だと考えられる。

先述のように9兆円規模のLBOとなれば、通常はエクイティだけでも3兆円程度は求められ、創業家はさらに約2兆円を工面する必要がある。創業家は総合商社の伊藤忠商事にも資金の拠出を要請しているが、伊藤忠も1社で残りを補うのは難しい。

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