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「セブン買収合戦」、創業家の9兆円MBOに黄信号 2025年2月中に買収したいが、資金集めに苦戦か

東洋経済オンライン / 2024年12月23日 7時35分

金額の大きさもさることながら、伊藤忠は子会社にファミリーマートを抱える。独占禁止法上の懸念や社内の関係者、加盟店オーナーなどの理解を得るためにも、過半など高いポジションをとる意思はないとみられる。持ち分法投資益を取り込める、エクイティ全体の15~20%程度の負担が妥当な線だろう。

借り入れにも難路

エクイティが不足する中、残りの買収資金を全額借り入れでまかなえるか、というとそう単純な問題でもない。

たしかに国内銀行の融資体制は手厚い。関係者によるとセブン&アイのメインバンクである三井住友銀行などメガバンク3行が大口信用供与等規制(銀行が一グループの貸出先へ行う信用の供与等の額を制限する規制)を超えない範囲で、1兆円超ずつの融資を検討している。

りそな銀行や三井住友信託銀行も参加を検討している。国内銀行団による融資は総額5兆円程度とみられ、国家プロジェクトの様相を呈している。

が、買収総額の7割を負債で調達しようにも、金額にして6兆円が必要だ。あるメガバンク上級幹部は「邦銀だけでどうにかなる問題ではない」といい、外資系投資銀行(外銀)にも融資への参画を打診していると明かす。バンク・オブ・アメリカやシティバンクの名前が候補に浮上している。

ここでもエクイティ不足が影響してくる。取引の内情をよく知るこの幹部は「外銀を説得するためにはもっとエクイティを積む必要がある」と指摘する。

伊藤家と伊藤忠の出資だけでは買収資金総額に占めるエクイティの比率が低すぎる(=レバレッジが高すぎる)ため、外銀の融資審査基準をクリアできていないようだ。

エクイティとデットの中間的な位置づけである、メザニン(優先株や劣後ローンなど)による調達で、アメリカ投資ファンドから調達する案もあるようだが、一般的には「買収総額の1割程度が限度」(国内外で多くの案件に携わるファイナンシャルアドバイザー)であり、こちらも不足分をすべて補うには至らない。

こうした状況から、セブン&アイ側も判断をしかねている状況だ。

12月5日に開かれたセブン&アイの定例取締役会。年内最後の取締役会ということもあり、「何かしら動きがあるはず」(グループ幹部)と関係者の耳目を集めていた。

ところが、結果は「意外にも無風」(同)。別の関係者によると、当日は特別委員会のスティーブン・ヘイズ・デイカス委員長から、当事者である伊藤副社長以外の取締役に検討状況が報告されたが「どちらの提案も不確実な要素が多い」という趣旨の説明をした程度だったという。

2月までの完了は難しい?

先出と別のメガバンク幹部は「年内に特別委員会のお墨付きを得ることが、2月までに完了する1つの条件」と語る。ただ現状は資金的な裏付けが乏しく、特別委員会も賛同しづらい状況だ。エクイティの上積みがなければ、2月までというスケジュールはもちろん、買収完了さえ危ぶまれる。

今後の焦点は、その上積みを誰が負担するかだ。創業家や伊藤忠が金額を積み増すことは容易ではないというのは先述の通り。セブン&アイとの協業を狙う「第3の出資者」の登場も噂されている。

カナダ企業の買収提案によって幕を開けたセブン&アイ争奪戦。国内大手銀行や総合商社のほか、海外の金融機関や投資ファンドも巻き込む事態に発展したが、前代未聞の規模の金策には、まだ時間がかかりそうだ。

冨永 望:東洋経済 記者

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