トップダウンの会社で頻発「PDCAのPが長過ぎ問題」 「リスクを最小限に抑えたい心理」が失敗を呼ぶ
東洋経済オンライン / 2024年12月24日 15時0分
リソースの浪費
長期化した計画段階では多くのリソースが費やされます。これには時間、労力、そしてコストが含まれます。本来であれば、これらのリソースは実行段階や評価・改善段階に活用されるべきものですが、過度に慎重な計画作成でリソースが無駄遣いされることになります。
さらに、複雑化した計画を実行に移す際にも、無駄なプロセスや冗長な管理体制が必要となり、コストが膨れ上がる可能性があります。
成功しない戦略の生成
最も深刻な問題は、これだけのリソースを投入し、時間をかけたにもかかわらず、最終的に成功しない戦略が出来上がってしまうことです。計画段階での仮説が複雑化し過ぎた結果、実行段階での効果が薄れ、成果が出ないことがあります。
さらに、過度に複雑な戦略は現場での実行や運用が難しく、計画通りに進まないことも多々あります。
「Pが長過ぎ問題」は以上のように非常に多くの、そして根深い影響を及ぼします。
さらに、トップダウン戦略のもう一つの大きな課題は、その硬直性です。大規模であり、多くのリソースが投入されるため、一度計画が始動すると軌道修正が難しくなります。市場の反応を見て、リアルタイムで戦略を変更することが求められる今のビジネス環境において、こうしたアプローチは大きなリスクを伴います。
消費者のニーズや市場の動向が変わる中で、初期の仮説に基づく戦略をそのまま推し進めることは、むしろ逆効果となることも少なくありません。
「Pが長過ぎ問題」の解決策
そこで、これらのトップダウン戦略による弊害を改善するために提唱したいのが「ボトムアップ戦略」です。
ボトムアップ戦略では、顧客中心のアプローチによる迅速な意思決定を可能にするために、まず顧客のニーズやフィードバックに基づいて戦略を立案します。
仮説に仮説を重ねるような過度な慎重さは避けられます。顧客からの直接のデータや声に基づいて迅速に意思決定するため、計画段階が短縮され、実行に移るまでのスピードが格段に向上します。
最小の検証結果やテストマーケティングを積み重ね、リアルタイムでのフィードバックを受けながら改善を行います。
この柔軟性を重視したアプローチにより、実行と改善のサイクルを素早く回すことが可能になります。市場の変化にも柔軟に対応でき、結果としてリソースの浪費を防ぐことができます。
そして、顧客の反応や市場の動向を見ながら戦略を柔軟に調整するため、最初から完璧な計画を求めるのではなく、実際の結果というファクトを重視した計画立案が行われます。「Pが長過ぎ問題」を回避しつつ、実行可能で効果的な戦略を構築することができるのです。
川端 康介:マテリアルデジタル取締役
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