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クリスマス「"4℃買う男性"論争」に終止符の根拠 4℃はもらうものではなく「自分へのご褒美」?

東洋経済オンライン / 2024年12月24日 9時0分

戦後から高度成長期にかけて、日本は欧米諸国に「追い付け追い越せ」の精神のもと、「良い商品を安く作って安く売る」ということに注力してきた。諸外国と比べて、所得格差が拡大しない形で経済発展を成し遂げたこともあり、「お金のある人に、高く買ってもらえばよい」という発想にもなりづらかった。 

筆者自身は、取り立てて愛国心が強いわけではないのだが、国産製品に対する愛着は強い。客観的に見ても、海外ブランドと比べて過小評価されている国産ブランドも多いように思う。

日本の食品や、外食、あるいはエンターテインメント・コンテンツに関しては、海外での評価も高く、ブランド価値も高まっているが、工業製品においては、日本は中国、韓国などの新興国に対して価格優位性を失っている。さらに、デジタル対応や顧客ニーズの変化に対応できずに、付加価値面でも欧米製品に対する優位性を失っており、ブランド価値を高めることが十分にできていない。

国産ブランドで、ハイブランド戦略を取って成功した事例として、セイコーグループの最高級ブランド「グランドセイコー」がある。もちろん、品質が優れているというのは大前提としてあるのだが、ニューヨークに旗艦店を出店し、そこでの成功を日本に逆輸入したことも大きい。

日本でのハイブランド戦略には、「海外(先進国)で認められた」というお墨付きが重要になるし、成功したブランドはだいたいそのような戦略を取っている。

4℃の話題に戻ろう。これまで、4℃は海外展開を試みてはきたものの、うまくいっているとは言えず、現在では国内市場を中心にビジネスを展開している。現状においては、「先進国で箔付けする」という戦略は取りづらいというのが現実だ。

「自分へのご褒美」でブランド復活なるか?

ジュエリーは他ブランドも含め、プレゼントやブライダルの需要が厳しくなっている状況下で、4℃は女性客拡大に努め、「自分へのご褒美」というポジションを強化している。

2023年9月、4℃は、ブランド名を隠して消費者に商品を見せる「匿名宝飾店」を東京・原宿に期間限定でオープンした。ブランド名にとらわれず、商品の価値を体験してもらうという試みだが、この施策は高い評価を得ることに成功した。

この展開の背景には、男性からのプレゼント需要を狙うのではなく、女性が自分のために買う宝飾としての市場を拡大する狙いがあったと考えられる。

これら施策が功を奏し、これまで売上高に占める客の男女比率は男性のほうが大きかったが、2024年2月期連結決算では女性客が36%と、男性客(35%)を上回ったという。

今年のクリスマスシーズンの広告を見ると、確かに4℃は「自分へのごほうび」としてのブランドを強化している。

その戦略は数字にも表れているように、じわじわと効いてきている。今回のクリスマスシーズンもそれが大成功となるかはまだわからないが、プレゼントに対する「男女のギャップ」でネタになったことを考えると、市場動向とブランドが置かれた状況をしっかり把握したうえでの展開であるように見える。

ブランド側にとっても、男性が購入してプレゼントした結果、お蔵入りになってしまうよりは、自立した女性が自分で選んで買って身に着けてもらうほうが幸せだと思うし、そういうブランドとしての道を目指したほうが現代的だろう。

4℃に限らず、国産ブランドが虚栄心に流されることなく、実直なブランドとして成功を収めることを、筆者としても願っている。

西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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