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福岡の「おひとり様の終活」に視察が相次ぐ背景 福岡市社協が自分らしい最期のためのサポート

東洋経済オンライン / 2024年12月25日 10時30分

契約時には、終活ならではのエピソードがある。「身寄りがなく、自分の死後をどうすればいいか心配で、夜も不安で眠れなかったという高齢者もいらっしゃいます。死後事務の契約をしたことで安心して過ごせると涙を流して喜ばれる方もいて、この事業の意義を実感しています。この事業を契約するために福岡市へ引っ越したいという方からの相談もありますが、その場合はまずは住み慣れた街で、終活に関する窓口に相談することをおすすめしています」(川﨑さん)。

死後事務の事業を始めて14年、スタッフは契約者1人ひとりの思いに寄り添い、それぞれのドラマを見守ってきた。

在宅での最期を希望する80代女性

大切にしているのは、本人の意思を尊重することだ。

「身寄りのない80代の女性は、入院せずに最期まで自宅で過ごしたいという希望がありました。私たちは病院に行ったほうが最期まで手を尽くせるのではないかという葛藤を抱えつつも、支援者たちと連携しながら環境を整え、ご本人が望む通りに在宅で看取りができたときは安心しました」(川﨑さん)

「また、少しずつ体が動かなくなるALSの70代の女性は、身体が思うように動かず、声もうまく出せない状態で契約の相談がありました。でも、エンディングノートに『自宅で死ぬ』と書かれていたので、担当医の協力を得て自宅で最期を迎えました。ご本人の人生ですから、思うようなゴールを迎えられるように精いっぱいサポートしています」(吉田さん)

もともと身寄りがなかったが、この事業を通じて親族関係が修復したケースもある。

80代の男性は、離婚した妻と暮らす娘がいたものの、何十年も音信不通のため、死後事務の契約をした。

「遺言を書くとき、娘に財産を渡したいと言われて、遺言作成を依頼していた弁護士が調査して娘の連絡先を把握しました。センターでは、父と娘それぞれに連絡を取っていたところ、最近は親子で直接やり取りするようになったようで、うれしく思っています」(吉田さん)

ある60代の男性は、ガンの末期で余命宣告されたが、身寄りがまったくおらず、本人は特に準備をされていないため、入院先の病院から社協に相談が入った。スタッフが病院に訪問して本人の意思を確認のうえ、死後事務を契約。

「病気の影響で痛みが出て、気分の波もあったので、通常より短時間の面談でスピーディに契約しました。場合によっては介入が遅くて、本人の意識レベルが急に低下し、契約の意思を示されたのに契約までたどり着けないケースもあるので、契約できてホッとしました」(吉田さん)

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