宇宙ごみ除去・アストロスケール「下方修正」の背景 株式市場からの評価と期待を両立する難しさ
東洋経済オンライン / 2024年12月25日 8時0分
誤算だったのは、民間顧客の衛星の寿命延長サービスを担う衛星初号機「LEXI-P」と、日本政府が顧客で、衛星の寿命延長サービスの「Project A」という2つの新規プロジェクトの契約が遅延したことだ。これらでプロジェクト収益の下方修正額の大半となる約50億円の下押し影響になるという。
説明会で岡田社長は「LEXI-Pは顧客が民間で実衛星へのサービスとなり、R&Dプロジェクトではない。そうした点で検討しなければならない事項に時間がかかっているが、かなり密な詰めの議論をしており進捗はしている」と強調した。
2つのプロジェクトとも従来予想よりは進捗が遅れているものの、今期第4四半期(2025年2月~4月)から貢献する前提で下方修正後のプロジェクト収益予想に織り込んでいるという。
6月の上場に先立って示されていた事業計画では、2025年4月期にLEXI-Pが大きく収益に貢献するとの見通しが記されていた。
説明会では、あるアナリストが「公開価格の850円は従来の計画に基づいて成立していた価格のはずだ」と指摘したうえで、「LEXI-Pについては、そもそも未契約のもの。いったいどういう形で(収益計上の)予想の中に計測していたのか」と質した。
最高財務責任者(CFO)の松山宜弘氏は「LEXI-Pは昨年、タームシート(法的拘束力のない条件概要書)の締結をしている。金額もうたわれており、期限もある。それを参照して織り込んでいる。あとは顧客との契約交渉の進展を考え、タイミングのバッファも考慮して事業計画に入れている」と答えた。
半年程度のズレは誤算の範囲
とはいえ、宇宙関連の事業は「半年程度のズレは誤差の範囲」と言われるほど進展の見極めが難しい世界。現にバッファを見ていたにもかかわらず、2025年4月期のプロジェクト収益への計上見込み額が大きく減少した。
未契約案件を業績予想に織り込むべきではないという見方もできるが、松山CFOは「こういうものを織り込んでいかないと、(予定通りに進んだ場合にプロジェクト収益の額が)後で大きくぶれてしまうということもあると思い、入れた形で計画を提示していた」と説明。岡田社長は「他に競合がなく、われわれにしかできない事業であることも契約よりも先に計画の中に見込んでいた理由の1つだ」と話した。
説明通りなら、LEXI-Pは単に計上が遅れただけで受注は確実ということになる。また、Porject Aは同様の案件内容で他国での受注実績があることから契約獲得の確度は高いと見ているようだ。ならば、今回の下方修正は、額こそ大きいものの本質的には問題でなく、ただの期ずれであり、何も心配することはないのだろうか。
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