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「洋上風力発電」が地球に悪影響も与える驚く事実 世界の科学者による解析で示された報告書の中身

東洋経済オンライン / 2024年12月27日 8時30分

要約版は、5つの危機、課題間の相互連関を示した表を掲載している。表に盛り込まれた「課題への対応の選択肢」は75あるが、そこから20を選んで表にしてみた。今回は要約版が先行公表され、報告書本体の公表は来年になる見込みで報告書本体の記述を確認することができなかった。そのため、「なぜそうなるのか」と納得できない点もある。

「洋上風力」が生物多様性、水、食料、健康に悪影響

驚いたのは、例えば、日本では再生可能エネルギーの普及拡大の切り札として期待されている「洋上風力」が、生物多様性、水、食料、健康に悪影響をもたらし、気候変動対策としての貢献度も「小さな丸」で表されている点だ。「ダムの運用」も、食料、健康にネガティブな影響を与え、気候変動へも中程度の悪影響を与えるとした。

メガソーラーや巨大風車群などの再生可能エネルギーによる発電施設は、立地状況によって、地域社会や自然環境にマイナスの影響を与える場合がある。最近になって県や市町などの自治体が規制条例を作るなど対策に乗り出したが、課題(危機)への対応により、ほかの課題(危機)への悪影響が出る場合があることが、世界の科学者による解析で示されたのは、初めて。

続けて18日に公表された報告書は、日本語では「社会変革報告書」と呼ばれる。生物多様性の損失の根底にある要因を明らかにし、大変革の可能性を探った。

政策決定者向けの要約版が先に公表され、報告書本体は来年1月に公表される予定。世界42カ国から選ばれた専門家101人(うち日本人6人)が作成した。

報告書は、生物多様性の損失の根底にある要因を①自然と人間の乖離②権力と富の集中③短期的、個人的な物質利益を優先させてきたことーーとし、これらが生物多様性と生態系保全の努力や自然の持続可能な利用のための努力を損ない、大変革への挑戦をくじく障壁となってきたとした。

この要約版でも、冒頭の「鍵となるメッセージ」で、「これまでの、そして現在のアプローチは自然の劣化を止め、反転させることに世界的規模で失敗している」と断じ、加速する生物多様性の損失、気候変動、環境汚染の危機は、「生物物理学的な後戻り不可能な転換点」に近づくリスクを増大させていることを指摘した。

「生物物理学的な後戻りできない転換点」とは、気候変動の分野でいうと、産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅がある一定の限度を超えると、どんどん地球温暖化が加速し、例えばグリーンランドの氷床の融解が一気に進むなど、防止や抑制が効かない状態になることを指す。かねて科学や生態学の分野で指摘されてきた。

生物多様性や生態系の機能保全にかける資金の少なさ

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