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「洋上風力発電」が地球に悪影響も与える驚く事実 世界の科学者による解析で示された報告書の中身

東洋経済オンライン / 2024年12月27日 8時30分

こうした基本認識を踏まえ、報告書は、世界の経済活動が自然に依拠して利益を上げている一方、生物多様性や生態系の機能保全にかける資金が極端に少ないことを、数字をもって示した。

要約版26ページにある図「世界の持続可能性の経済的状況:相互依存と資金のギャップ」を再掲する。

説明の英文を日本語にすると、以下の通りになる。
1) 世界のGDP 105兆6000億USドル
2) 中~高度に自然に依存している部門で生じた世界のGDP 58兆USドル
3) 自然の劣化に責任のある部門による外部不経済 10兆7000億USドル
4) 自然の劣化に責任のある部門への直接的な補助金 1兆4000億~3兆3000億USドル
5) 生物多様性を世界で維持し、生態系の機能を保つためには必要な金額に比べ、2030年まで、年5980億~8240億USドルが足りない。


6) 世界の生物多様性保全のための資金 1350~1560億USドル
 * 1)、2)は2023年の値、3)~6)は既存データをインフレ調整し、2023年の値として推定したもの

この図の説明から、筆者が読み取ったポイントは以下の通りだ。

▽ 世界のGDPの約半分は自然に依存している部門から生じた。
▽ 自然を劣化させた経済活動により、大気や水の汚染など「外部不経済」が引き起こされ、被害額として金銭に換算すれば、自然に依存している部門が生み出したGDPの5分の1に達する。
▽ 自然を劣化させた経済活動に対して投じられた補助金の額の半分の金額があれば世界で生物多様性を維持し、生態系の機能を保つことができるが、世界の生物多様性保全のための資金はその5分の1以下である。

4年前、私はIPBESで新たな未来を拓こうと世界における政策変更についての研究を進める研究者にインタビューしたことがある。「この世の終わりを描くディストピア的な見方、このままで良いとする楽観的な見方のどちらにもうんざりしている」若手研究者たちが中心になり、世界各地の取り組み事例に注目している、と語ってくれた。

国立環境研究所の研究員、吉田有紀さん(37歳)は、そうした若手研究者の一人だ。報告書本体の第一章で主執筆者を務めた。吉田さんによると、報告書はスペイン、アフリカ・ケニア、南米など世界の取り組み事例に関する4万5000の文献をもとに、さまざまな事例の分析に力を入れたという。

日本の取り組み事例も盛り込まれた。その1つ、新潟県佐渡市では、2008年にトキの放鳥を開始し、野生復帰を進めてきた。佐渡市の認証米「朱鷺(とき)と暮らす郷(さと)」制度のもと、農家が中心になってトキの生息に欠かせない水田の環境づくりに取り組んだ。

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