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輪軸不正や脱線、2024年「鉄道トラブル」事件簿 大事故には至らなくても信頼揺るがす事態に

東洋経済オンライン / 2024年12月27日 6時30分

貨物列車脱線から全国に飛び火「輪軸不正」

夏以降、貨物列車の脱線事故も相次いだ。7月には山陽本線の新山口駅で、貨物列車を牽引していた機関車の車輪のうち1軸が脱線。11月には函館本線の森―石倉間の踏切で機関車1両・コンテナ貨車20両の貨物列車のうち貨車5両が脱線する事故が起きた。さらに12月には、鹿児島本線の川内駅で機関車とコンテナ貨車が脱線。この事故の影響で同線の川内―隈之城間は不通が続き、再開は12月31日になる見込みだ。

函館本線の事故はレールの腐食が原因とみられ、鹿児島本線の脱線は現在も調査が続いている。だが、中でも鉄道の信頼を揺るがすこととなったのは、7月の山陽本線の事故から明るみに出た、車両の走行にかかわる「輪軸」組み立て作業時のデータ改ざん問題だろう。

山陽本線新山口駅の事故では、脱線した機関車の輪軸が折れていたことが判明。その調査の過程で、車輪に車軸をはめ込む際に基準値を上回る圧力をかけていたにもかかわらず、基準値内のデータに差し替えて記録するなどの不正がJR貨物の3つの車両所で行われていたことが判明した。

JR貨物でのデータ改ざん発覚を受け、国土交通省は9月、全国の鉄道・軌道事業者に輪軸の緊急点検を指示。その結果、計91の事業者で圧力が規定と異なるなどの「不適切な事案」があり、さらに計50の事業者では記録の改ざんが確認された。

国交省の発表では、改ざんが確認された鉄道事業者の車両でも安全に運転できないものはなかったとしている。ただ、車輪・輪軸という鉄道の走行を支える部分の組み立て作業で、全国的に不正が発覚した事態は重大だ。

地方鉄道でも相次ぐ事故

事故の発生で不通が続いている鉄道もある。千葉県の第三セクター、いすみ鉄道では10月4日、2両編成の普通列車が走行中に脱線した。乗客乗員105人にけがはなかったものの、同日から全線が不通となったままだ。

事故原因は調査中だが、枕木の劣化が一因との見方がある。2013年に同鉄道で起きた脱線事故は枕木の劣化が原因だった。枕木の腐食などによる劣化が引き金となる事故は過去にも、今年11月に2027年度末で休止の方針が示された弘南鉄道大鰐線(青森県)など各地の地方鉄道で起きており、地方ローカル線の保守・維持の困難さが安全面にも影響を及ぼしているといえる。

全国的にはあまり目立っていないが、トラブルが続発しているのが熊本市交通局の路面電車、熊本市電だ。2024年は運行開始100周年の記念すべき年だったが、年明けから赤信号の見落としや脱線、ドアを開いたまま走行するなど15件のトラブルが発生している。有識者による検証委員会が再発防止策をまとめ、年明けに最終報告書を提出する予定だ。

乗客に多数の負傷者が出るような大事故はなかったとはいえ、鉄道への信頼性を損なうようなトラブルが目立った2024年。人手不足が課題となる中、鉄道各社はさまざまな面で合理化や効率化を迫られている。だが、最優先されるべきは輸送の安全であり、鉄道各社が推進する経営の多角化も鉄道業での高い信頼性があってのことだ。安全をおろそかにすることのない運営が求められる。

小佐野 景寿:東洋経済 記者

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