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「レコード大賞歌手」の彼女が選んだ意外なその後【再配信】 1曲1000円で歌う、ゴールデン街の「流し」の生き様

東洋経済オンライン / 2024年12月27日 8時0分

新橋駅の駅前で弾き語りをしていると、喜んでくれる人や、多めにチップをくれる人もいた。一方で「うるせえ!」と怒鳴られたり、「ギターの弾き方がなってない」と絡まれたりもした。良い日も悪い日もあったが、本当にしたい音楽をしたいやり方で表現できることに、これまでにない楽しさを感じていた。

初めて流しをしたのは2016年。横浜の飲み屋街でバーを経営する知人に誘われたのがきっかけだった。その知人は洋楽好きで、Be-Bさんが歌うハードロックに大喜びだったが、近隣の店にも寄ってみたところ、反応はさまざまだった。

「歓迎してくれるお客さんもたくさんいたけれど、嫌な顔をする人とか、全然こっちを向いてくれない人もいました。当時は投げ銭にしていたのですが、1円も出してくれない人もいたり。すごく勉強になりましたが、やっぱりガチの流しは難しいなと思いましたね」

飲み屋のつながりで新宿ゴールデン街の店主たちを紹介され、「こっちでもぜひ」と誘われた。やってみたものの、知り合いの店以外ではなかなか要領がつかめない。流しは入った店の空気を瞬時に読み取り、客たちの懐にすっと入り込む技術や、潔く引く判断も重要になるため、歌や演奏だけできても務まらない難しさがあるのだ。結局、数カ月で休止することに。

今に感謝して、「幸せ」って言えたら勝ち

それでも音楽の練習は欠かさず、ライブバーなどで月10本前後のライブをしながら、清掃の仕事をして生計を立てる日々。実はこのころ、Be-Bさんは偶然「家、ついて行ってイイですか?」というドキュメンタリー番組に出演し、当時の暮らしについて「超幸せ」と語っている。自分の望む音楽活動を、十分に実現できていたわけではなかったが、その裏にあった思いをこう明かす。

「今が幸せじゃないと思ったら、人生ヤバいでしょ。ケンカでボロボロにやられても、『今日はこのくらいにしといてやろう』って言うみたいに、どんな状況でも今生きてること、今あるものに感謝して、『幸せ』って言えたら勝ちなんじゃないかな」

そして2022年、久しぶりに新宿ゴールデン街の馴染みの店に立ち寄ったところ、居合わせた客が「前にハードロックを歌う女性の流しがいたらしいけど、どうしているんだろう?」と口にした。「ちょっと待って、それ私のことじゃん!」と驚いたBe-Bさん。聞くと、当時のゴールデン街には流しがいなくなっていたという。

文化であり伝統であり名物でもあった存在が消え、「何とか力になりたい」と思ったBe-Bさんは、この街でもう一度流しをすることを決めたのだった。ゴールデン街は独特の雰囲気があるが、今ではすっかり馴染んでいるという。

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