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流行語が「死語」にならず世代を超えて定着する条件 「真逆」「夜ご飯」もかつては一般的ではなかった

東洋経済オンライン / 2024年12月29日 16時0分

父:悪かった。ハーゲンダッツ、箱で買ってやるから。……はあ、給料前なのに、つらみ。

「み」がつくのは形容詞だけではありません。「わかる」という動詞に「み」がついた「わかりみ」という語が若い世代のあいだで広まっています。

「知る」と「わかる」の違いは何でしょうか。「知る」は知識を手に入れるだけですが、「わかる」は理解と共感を伴います。「わかりみ」で大事なのは後者の共感です。「わかりみ」は「その気持ち、わかるわかる」と共感する言葉です。

「わかりみ」は文末に使われることが多く、「わかりみ!」などと単独で使われるのが一般的です。共感がとくに強い場合は「わかりみが深い」という形もよく使われます。そのほか、「わかりみが強い」「わかりみが過ぎる」「めっちゃわかりみ」「わかりみしかない」など、慣用句的なパターンは豊富で、どれも強い共感を表します。

井上史雄氏の分類に「言語変化」というものがあります。若者言葉として使われてきたものが世代を越えて定着し、頻繁に使われることで当たり前の日常語となり、若者言葉という出自さえ忘れられていく言葉です。こうした言語変化の例として「サボる」という語があります。

「サボる」の「サボ」は「サボタージュ」というフランス語に由来しますが、もはや日本語感覚で使われています。同様に、大学で広く使われていた演習形式の授業を指す「ゼミ」もまた「ゼミナール」というドイツ語に由来しますが、大学という枠を越えて一般に定着した言語変化の例と見ることができるでしょう。

歴代「流行語大賞」は死語だらけ

日本社会は時代の流行だけでなく、言葉の流行にも敏感で、新語・流行語大賞というイベントが毎年開かれています。そこにノミネートされる語は、当時の時代性を反映したものが多いのが特徴です。

そのため、井上史雄氏の言う「一時的流行語」であることが多く、過去の新語・流行語大賞のリストを見ると、今では使われなくなった死語が並んでいることに気づかされます。流行語から言語変化を起こし、一般に定着する語は少ないようです。

では、どのような語が言語変化を起こし、世代を越えて定着するのでしょうか。私が言語変化を起こした語としてまず思い浮かぶものは「真逆」です。私自身の学生時代に「真逆」という言葉を聞いた記憶はなく、「正反対」という言葉が使われていました。

ところが、世紀が変わるころ、若い世代が「真逆」という言葉を使っていることに気づき、当時、違和感を抱いたことを憶えています。そんな言葉が定着するわけがないと考えていた私の予想とは裏腹に「真逆」という言葉は世代を越えた広がりを見せ、今では日常語になりました。

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