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「技術の日産」を象徴する名車たちのヒストリー 対照的なトヨタの存在、最先端のEV技術は健在

東洋経済オンライン / 2024年12月29日 11時0分

時間を要した背景にあるのは、リチウムイオンバッテリーの実用化と普及を待つ必要があり、それまでの鉛酸バッテリーはもちろん、ニッケル水素バッテリーでさえ、EVには不十分だった。そのとき、いち早くリチウムイオンバッテリーの研究開発を行ったのが、日産と三菱自だった。技術の神髄を見抜く力は衰えていなかったが、世の中がそれに追従できなかったのである。

なおかつ、充電を含めたEV利用の仕方が、エンジン車やハイブリッド車と異なることを日産は見抜いていたが、世間が理解せず、大手媒体や行政が、充電基盤整備のあるべき姿を誤解し、不手際をもたらした。それは未だに解消しきれず、急速充電器の整備に多くの目が注がれている。しかし為すべきは、普通充電の整備であり、自宅や勤務先での基礎充電と、出先での目的地充電の充実である。

欧米は、遅ればせながらEVへの投資を試みたが、充電基盤整備の仕方を同じく見誤り、普通充電を基本としたEVの使い方にも知見が不足し、投資を見直す事態に陥っている。それは、単に中国のより安価なEVの出現のせいばかりではない。

日産は、EVをもとに、“e-POWER(イーパワー)”と名付けたシリーズ式ハイブリッドを編み出した。これは、トヨタがプリウスで世に出したシリーズ・パラレル式と異なるハイブリッド方式である。ガソリンエンジンは搭載するが、発電にのみ利用し、駆動力としては使わない。まさにEVと同じ走り方で、車載バッテリー量を減らし、エンジンによる発電を組み入れたハイブリッド車だ。これが、瞬く間に人気を呼んだ。

技術の日産は、今でも健在である

かいつまんで事例を挙げたように、日産は、技術で押してきた自動車メーカーであることがうかがえる。そしてEVに関して付け加えれば、単に1台のクルマとしての商品性だけでなく、EVを活用したV to H(ヴィークル・トゥ・ホーム)の実用化や、系統電力と結ぶスマート・グリッドへ組み入れる研究などのほか、EV後に性能を残すリチウムイオンバッテリーの再利用も、初代リーフ発売前から専門の会社フォーアールエナジーを設立し、すでに再利用事業をはじめている。他社のような実証実験の域を超え、将来を見据えた事業の実績を積み上げているのである。

EVの周辺技術において、現在なお世界最先端であるのが日産であり、アメリカのテスラがまだ手をつけていないバッテリー再利用の分野の知見を持っている。単なる製造業ではなく、EVを核にした電気エネルギーの最適活用という視点での事業展開が、日産の存在感をより強めていくことになるだろう。テスラが、自動車メーカーではなくAIを含めたIT企業であるように、エネルギーを有効活用する経営視点が日産にとって重要になってくるはずだ。

御堀 直嗣:モータージャーナリスト

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