「第九といえば年末」ではない?欧州の意外な反応 ヨーロッパ人が一番に思い浮かべるものとは?
東洋経済オンライン / 2024年12月31日 13時0分
アジアで初めて第九が演奏されたのは、1918年。
第1次世界大戦のドイツ人捕虜たちが、徳島県鳴門市の板東俘虜(ふりょ)収容所にて行った演奏会だ。その後も、日本各地でドイツ人捕虜による演奏会が続き、次第に第九が日本人に知られるようになる。
同じころ、シラーが「歓喜の歌」を書いた地であるドイツ、ライプツィヒにて、終戦を記念した第九のコンサートが“年末に”開かれた。
この伝統は現在まで続き、ほかにもベルリンフィル、バイエルン放送交響楽団、ウィーン交響楽団など、ドイツ語圏の一部では、年末に第九の演奏会が開かれている。
日本では、おそらくこのライプツィヒでの年末演奏会の影響により、“年末に第九が演奏される”という伝統が1940年代に始まり、現在に至る。
「第九」が欧州で持つ意味とは
一方、海外では日本のように「年末の風物詩」として認知されるほどの知名度はない。
「日本人は第九といえば、まず年末を思い浮かべる」と言うと、欧州人から「第九といえば、年末よりアレじゃない?」という返答が多いところを見ると、欧州では別のイメージが先行しているようだ。
ヨーロッパ人が第九と聞いて一番に思い浮かべるのは、「ヨーロッパ連合(EU)」や「ヨーロッパの統一」だ。
EUの公式サイトにも、「ベートーヴェンが共感した、『全人類が兄弟となる』というシラーの理想の世界像が、EU諸国が共有する自由、平和、団結の価値観を表現している」と記載されている。
第九最終楽章「歓喜の歌」は、1972年に「欧州の賛歌(アンセム)」として宣言され、1985年に正式に採用された。以後、EU諸国をつなげる欧州の平和と統一の象徴の曲として、広く知られている。
EUの公式式典やイベント、ニュース報道等ではこの曲が演奏されるため、欧州人ならこの曲を聴くと、青地に星が並んだEUの旗を一番に連想する人が多いだろう。
それでは、なぜ第九の「歓喜の歌」がヨーロッパの賛歌に選ばれたのだろう? その背景には日本生まれのある人物が重要な役割を果たしている。
第九をEUの賛歌として提案したのは、リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーというオーストリアの貴族だ。実はこの人物は、オーストリア人伯爵と日本人女性の間に生まれ、和名を「青山栄次郎」という。
日本とEU賛歌の深い関係
リヒャルトは、欧州の統一こそが平和と繁栄の礎になるという「汎ヨーロッパ主義」という思想の提唱者であり、EUの生みの親として知られる、欧州の歴史の教科書に最初に登場する人物だ。
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