「奄美にあるハブ屋」が3世代に渡って続く背景 時流読み変化続けるハブ屋のビジネス(前編)
東洋経済オンライン / 2025年1月1日 9時0分
2025年の干支(えと)は「巳(み:ヘビ)」。その独特の姿形から、ヘビが苦手という人は少なくないだろう。だが、世の中にはヘビを使ってビジネスをする企業がある。その1つが、有限会社原ハブ屋奄美(鹿児島県奄美市笠利町)だ。
同社は1948年創業の「ハブ屋」。戦後から3代にわたり、ハブを使った加工品の製造、卸、販売を行ってきた。
奄美群島が日本に復帰した1953年当時、奄美大島にはハブ屋が何軒もあったそうだが、いまは原ハブ屋を含めた3軒が残るのみ。なぜ原ハブ屋は3代もの長きにわたりハブ屋を続けることができたのか。その歴史をひもとくと、時流を読み変化し続けることを恐れない企業姿勢が見えてきた。前後編に分けて話を聞いた。
後編:「奄美にあるハブ屋」使用禁止Xデーに向けた対策
8種類のヘビが生息する奄美大島
東京から飛行機で2時間半ほど。沖縄と鹿児島のほぼ中間に位置する世界自然遺産の島、奄美大島。島内には8種類のヘビが生息し、そのうち4種類が毒を持つ。
【写真】戦後すぐに創業した原ハブ屋。今ではハブのショーも開催。
なかでもハブは、その毒性の強さから長年奄美の人々に恐れられてきた。かつては撲滅すべき存在とされ、ハブ撲滅推進協議会(現:ハブ対策推進協議会)による一斉駆除がたびたび行われてきた。
人の生活圏に出没したハブは、放置すると近隣で被害が出る恐れがあるため、駆除することが推奨された。1954年からは自治体による駆除ハブの買い上げ事業が始まり、ハブを保健所に持っていくと1匹いくらで買い取ってもらえるようになった。この事業は現在も続いている。
奄美大島にはかつて、この“厄介者”のハブの加工品を扱う、通称「ハブ屋」が何軒もあったという。
「買い上げ事業で自治体が住民から買い取った駆除ハブは血清をつくるために毒を採取され、冷凍したのち焼却されます。しかし、捨てるのはもったいないと、ハブ屋が自治体から買い取り、さまざまな加工品にして販売してきました」
こう語るのは、奄美大島にいまも残る3軒のハブ屋のうちの1軒、「原ハブ屋」の原武臣さん。原ハブ屋の初代・原宮哉(はら みやさい)さんの孫で、現在2代目社長を務める原武広さんの長男である。
主力商品は乾燥ハブ、ハブ粉末、ハブ油
原ハブ屋の創業は、買い上げ事業が始まる6年前の1948(昭和23)年。当時30歳の宮哉さんは義父から乾燥ハブの作り方を教わり、本土の業者に卸すようになった。乾燥ハブとは、ハブを丸ごといぶして乾燥させたもの。粉末にして飲むと滋養強壮に効果があるとされている。
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