タクシー乗り放題1円「昭和の始まり」どんな時代? 「2025年は昭和100年!」当時を振り返る
東洋経済オンライン / 2025年1月1日 13時0分
今年、2025年は昭和100年の年である。昭和が始まった時代、この国はどんな姿だったのだろう。
新年を迎え、遠くて近い昭和を、改めて「いま・ここ」に呼び出してみると、姿かたちの定かでない「大衆」が、消費者として時代の前面に浮上する。
不気味な「影」のように現れたその時代現象は、消費を加速し享楽をもたらすと同時に、いずれ戦争に引きずられてゆく怪しくも暗い揺らめきとして、昭和戦前の日本を特徴づける。
タクシーは市内ならどこまで行っても1円
大正天皇の崩御によって「昭和」の時代が始まったのは、1926年12月25日のことである。
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大正デモクラシーを経たこの時代は、ちょうど「大衆化」の第一波が押し寄せた時期であった。私鉄沿線の郊外に、一戸建ての分譲住宅「文化住宅」が造成され、中流向け洋風住宅としてブームを呼んだ。
この時代、タクシー料金が市内ならどこまで行っても1円という「円タク」が登場した。大衆化の波は、タクシー料金を規格化された1円の商品として市場化したのだ。
日本のタクシーの歴史は、明治末年のT型フォード(6台)にまで遡る。その後、人力車にならって夜間割増し制度までできたが、料金体系がバラバラで利用者からの苦情が相次ぎ、円タクの登場となった。
円タクは大阪から始まり、昭和2(1927)年には当時の東京市内(武蔵野市、三鷹市は圏外)でも普及した。
やがて料金メーターを設置したタクシーもふたたび登場するが、円タクは戦時期にガソリン不足で石炭車、木炭車に切り替わったのちの昭和19(1944)年に廃止になるまで続いた。
この円タクと同じ頃、出版界でも1円のヒット企画が生まれていた。
もうすぐ「昭和」に改元されることになる大正15(1926)年、改造社から『現代日本文学全集』(全37巻、のちに全62巻に拡大)の発売が告知された。「出版界の革命」とまで言われた、1冊1円の全集本「円本」の登場である。
改造社が最初に売り出した円本には、23万人という空前の予約申し込みがあり、一時代を画するヒット企画となった。円本のヒットのおかげで、傾きかけていた改造社の経営は持ち直した。
この大ヒットを見て、続いて新潮社が昭和2(1927)年に『世界文学全集』全38巻の予約を募集、1カ月で58万人の予約申し込みを記録した。
にわかに信じられないような数字だが、ブームはなおも続き、『現代大衆文学全集』(平凡社)など200種以上の円本全集が出回り、空前の「円本時代」をもたらした。
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