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「東インド会社への復讐」画策した男の悲しい末路 世界初の空売りはどう行われた?歴史振り返る

東洋経済オンライン / 2025年1月3日 18時0分

オランダの港(写真: よしき / PIXTA)

お金(貨幣)にまつわる歴史は、現代の金融、株式市場を考えるうえでも重要な知識です。たとえば世界初の「株の空売り」が行われたエピソードからは、「株式市場の重要な点は上昇することではない。株式市場の重要な点は、株の適正な価格を見極めることにある」ことがわかります。ジャーナリスト・作家のジェイコブ・ゴールドスタインが上梓した『マネーの世界史 我々を翻弄し続ける「お金」エンタテインメント』(松藤留美子訳)を一部抜粋・再構成してお届けします。

オランダでの株の空売り

世界の歴史上初めて行われた株の空売り(ショート)がどんなものだったか見れば、憎まれるわけもわかるだろう。それでも、空売りが社会にとって有益なもので、ひどく過小評価されているわけもわかるはずだ。

【写真】『マネーの世界史 我々を翻弄し続ける「お金」エンタテインメント』(ジェイコブ・ゴールドスタイン)

オランダの商人イサック・ル・メールはVOC(Vereenigde Oostindische Compagnie/連合東インド会社)の創設者のひとりで、アムステルダム最大の株主でもあった。VOC創立の数年後、ル・メールは他の取締役たちと争うようになった。

詳細は不明だが、どうやらル・メールが航海の資金の一部を提供したにもかかわらず、ル・メール本人の主張する出資額を会社側が払い戻さなかったということのようだ。

ル・メールが会社から大金をだまし取るために経費を水増しした可能性もある。これが訴訟にまで発展した。取締役たちから持ち株を凍結されたル・メールは、アムステルダムを離れて田舎に引っ込むと復讐を企てた。

VOCに復讐するために、ル・メールは地元の穀物商が長年利用してきたテクニックを使った。2人の人間が、将来あらかじめ決めておいた日にちに、あらかじめ決めておいた価格で売買すると合意する。

たとえば、ある商人が今日から1年後に1ブッシェルの小麦を100ギルダーで買うと約束するとしよう。これを先物契約(先物取引)というが、現代ではこれと同じような契約の取引で何兆ドルも稼ぎ出す人々がいる。

ル・メールは密かに共謀者らとチームを組んでVOC株の先物契約を結び始めた。1608年10月、ル・メールと協力する取引業者がアムステルダムのダイヤモンド商と契約を結んだ。

ル・メールの取引業者は1年後に145ギルダーで1株のVOC株をダイヤモンド商に売却すると合意した。つまり、契約の執行時にVOC株が145ギルダーよりも低い価格で売買されていた場合、ル・メールは公開市場で株を買い、即座にそれをダイヤモンド商に売れば利益を得られる、ということだ。

多くの株取引を成立させたル・メール

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