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KDDI「AIドローン構想」が示した警察支援の可能性 災害時も平時も、全国10分圏内を目指す

東洋経済オンライン / 2025年1月3日 7時40分

この判断の背景には、警察活動特有の要件がある。基本的に警察でのドローン運用は警察職員が行うことがほとんどだ。民間企業のサービスを活用する場合、運用体制や情報管理など、整理すべき課題は多い。また石川県デジタル推進監の成瀬氏によると、実際の導入に際してはプロポーザル方式での業者選定なども想定されるという。「今回はKDDIにユースケースを示していただいたが、本格導入となれば改めて検討することになる」と説明した。

全国10分圏内へ――コンビニ発のドローン構想

今回の実証実験で示された警察活動支援の可能性。これはKDDIが描く「日本中どこでも10分以内で駆けつけられる」という壮大な構想の一歩だ。石川県での取り組みを皮切りに、同社は全国のローソン店舗をドローン基地として活用する計画を進めている。

最大の課題は初期投資の大きさだ。1機250万円するSkydio X10ドローンに加え、2025年には専用の発着基地となるドローンポートの導入も必要となる。ドローンオペレーターの人件費も月間100万円程度がかかってくる。「こうしたコストを災害対策予算だけでまかなうのは現実的ではない」とKDDIの松田CDOは語った。

そこで同社が打ち出したのが「フェーズフリー」という考え方だ。災害時だけでなく、平時から様々な用途でドローンを活用することで、投資効率を高めようという戦略である。すでに石川県では、能登半島地震後の橋梁点検にドローンを活用。インフラ点検や警察活動支援など、日常的な業務での実績を積み重ねている。

平時のドローン活用については、ユースケースの開拓が進んでいる。「地域によってユースケースが異なる。密漁対策が必要な地域もあれば、熊の出没対策や防犯対策を求める声もある」とKDDI鶴田氏は述べた。

もちろん、技術の進展も進む。2025年に発売予定のドローンポート「Dock for X10」は、自動離発着と充電機能を備え、24時間365日の即時出動を可能にする。通信圏外での運用を可能にするスターリンクとの直接通信も視野に入れる。「将来的には1人のオペレーターが複数機のドローンを操作できるようになる」とKDDIスマートドローンの博野社長は展望を示した。

将来的には商品配送や物資輸送への展開も視野に入れるが、ここには法規制や技術的課題が残されており、即時の実現は難しい。まずは今回実証された警察活動支援のような具体的なユースケースから着実に実績を重ね、段階的な実用化を進めていく方針だ。

石井 徹:モバイル・ITライター

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