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「トランプ関税は怖がらなくてもいい」は本当か あまり楽観的になるのだけは避けたほうがいい

東洋経済オンライン / 2025年1月3日 20時30分

減税はどのようなものであれ、市場には歓迎されそうだ。これは議会の承認を必要とするが、減税は共和党の方針ともおおむね一致するものであり、上下両院を共和党が制している状況下でなら、すんなりと可決されそうだ。

もちろん、大規模減税は財政赤字の拡大を招き、長期金利を一段と上昇させるという副作用もある。減税で景気が刺激され需要が高止まりを続ければ、インフレ圧力が改めて高まることも考えられよう。

もっともこうした問題は、ある程度時間が経ってから出てくるものであることも確かだ。市場の初期反応はやはり、かなり強気になるのではないか。また、さまざまな規制緩和についても、議会の承認を必要としないものが多いだけに実現の可能性が高いと思われる。

すでに期待が高まっているが、特に銀行や証券取引に対する規制緩和が実現するなら、投機資金の流入を促すことなどで、株価をしっかりと押し上げそうだ。民主党政権下では、厳しい規制が進められてきただけに、金融業界が諸手を挙げて支持することは間違いない。

一方でこうした規制の緩和は、行きすぎればモラルハザードを引き起こし、巨大なバブルを作り出し、それを崩壊させてしまうリスクも高いのだが、減税同様、そうしたマイナスの影響は、かなり後になってからしか出てこないのが実際のところだ。

一方で実現が難しい、あるいは大幅な修正を迫られそうな政策はと言われれば、不法移民の強制送還と、輸入品に対する高関税の賦課ということになるだろう。

まず不法移民の強制送還は、法律的には何の問題もないものではあるが、「言うはやすし、行うは難し」の典型的なものとなるだろう。生身の人間が動くわけだから、書類にサインするだけで全てが解決するわけでは決してない。強制送還には膨大なコストが掛かるため、その予算を確保するには議会の承認が必要となるだろう。送り返す先の政府とも調整が必要になるし、アメリカ国内で生まれた未成年の親を、本国へ送還する場合には、人道上の問題も浮上してくる。

一方、アメリカの労働力の4%超が不法移民が占めているとの調査もある中で、農業部門をはじめ、不法移民の労働力によって成り立っているビジネスがあることも、忘れるべきではない。

仮に不法移民を一人残らず送還したとすれば、労働力が大幅に減少、雇用コストが跳ね上がるという懸念もある。コストの問題だけで済めばまだよいが、そもそもそのビジネスが成り立たなくなる恐れのほうが、はるかに高いと思われる。さらに問題をややこしくさせているのは、そうした問題を抱える農村部の多くは、共和党の強固な支持基盤だということだ。不法移民の強制送還に関する予算案には、農村部の共和党議員が反対に回ることも十分にありうる。

トランプ次期大統領が意地を張るリスクに注意

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