銀行が恐れる日銀「預金準備率引き上げ」の現実味 銀行の「棚ぼた利益」に対する国民の不満も
東洋経済オンライン / 2025年1月5日 7時40分
そうした中、スイス中銀は預金準備率を引き上げて金利が付かない法定準備預金額の部分を拡大させることで、利払い負担の軽減を図ったわけだ。
ユーロ圏でも、経済学者や欧州議会議員らが2024年1月に欧州中央銀行(ECB)理事会に対し、預金準備率の引き上げを求める公開書簡を提出している。預金準備率の定めがないイギリスでも、中銀の利払い負担軽減を目的に法定準備預金額(最低準備預金制度)の導入を提案するレポートを、予算責任庁が2021年に出している。
金利上昇局面で各国中銀の利払い負担が課題となる姿が浮かび上がる。
日銀でも「当然ありうる話」
諸外国が利下げに転じる一方で、利上げを模索し続ける日銀にとっては、今後の利払い負担が大きな懸念となりうる。
日銀は2024年12月末に発表した「日銀レビュー」の中で、日銀自身の財務と先行きの試算結果を示している。そこでは「市場金利が織り込む金利見通しを前提とした場合には、財務面での負の影響は限定的」とした一方で、「より厳しい仮定を置いた場合には、一定の財務リスクがある」と分析している。
日銀の財務悪化に警鐘を鳴らす日本総合研究所主席研究員の河村小百合氏は、「(預金準備率の引き上げは)諸外国ですでに議論されているトピック。財務悪化局面に突入する日銀が実施することは当然ありうる話」だと強調する。
みずほリサーチ&テクノロジーズ上席主任エコノミストの井上淳氏も、「金融政策正常化の過程で超過準備が減少するまでの過渡期的な政策として(預金準備率の引き上げは)ありうるのではないか」と指摘する。
海外有識者の中には「大規模な付利により銀行の財務が改善することで貸し出し態度が緩み、利上げによる金融政策効果が低下する」との指摘もある。より効果的な金融政策運営を行うためにも、預金準備率の水準をどう設定するのかは日銀にとって重要な課題といえる。
とはいえ、日本の準備預金制度は法律で定められたものであり、預金準備率の変更に当たっては慎重な議論が求められる。準備預金制度は1957年に導入され、1991年以来、預金準備率は変更されていない。
法律では「通貨の調節を図るため必要があると認める場合には」日銀が預金準備率を変更できるとしている。しかし、預金準備率の上限は20%と定められており、「金融機関の預け金の保有に伴う負担を考慮しなければならない」とも記されている。金融機関の収益との兼ね合いを意識する必要があるわけだ。
むしろ金融機関は儲けすぎ?
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