大河「べらぼう」が"光る君へ"を超えて刺さるワケ "光る君へロス"でも「異色ビジネスドラマ」にハマる
東洋経済オンライン / 2025年1月5日 14時0分
しかし時世は移り変わり、田沼意次は失脚。代わりに台頭した松平定信による寛政の改革では、蔦重の自由さと政治風刺が問題になり、財産の半分を没収される処罰を受ける。周囲では江戸追放や死に追いやられるものもあらわれる……。蔦重は、その後も幕府からの執拗な弾圧を受け続けるが、反権力を貫き通し、筆の力で戦い続ける。そんな中、蔦重の体を病魔が襲う。
命の限りが迫る中、蔦重は決して奪われない壮大なエンターテインメント「写楽」を仕掛けるのだった……。
令和の“いま”に通じるビジネスドラマ
脚本を担う森下佳子さんが制作統括・藤並英樹さんから企画を持ちかけられたとき、「合戦もない、もちろん天下も取らないし、非業の死を遂げるわけでもない、畳の上で、脚気で死ぬ本屋のおっちゃんの人生」が選ばれたことに驚いたそうです。
「光る君へ」の主人公・紫式部が作家・歌人なら、「べらぼう」の主人公・蔦屋重三郎は版元(出版社)であり出版プロデューサー。知る人ぞ知る人物であり、歴史の真ん中にいるわけではありません。しかも活躍のジャンルは政治・統治ではなく文化・教養であり、「NHKは2作連続で異色の物語を選んだ」と言っていいでしょう。
前述した主なあらすじを見ると、当作が通称“蔦重”の一代記であるだけでなく、ビジネスドラマの要素が濃いことに気づかされます。
蔦重は吉原の案内係を務めるかたわら貸本屋を行い、さらに吉原を変えるべく出版業に進出。女郎たちを救うために当時のガイドブックやファッションカタログを企画するほか、若き才能を見出してプロデュースしていく。さらに、権力者の圧力によって苦境に陥りながらも、世の中に面白いものを送り出そうと奮闘する……。
蔦重が普通の庶民であることも含め、現代のビジネスシーンに重ねて見られる物語であり、同時に「エンタメはどうあるべきか」を問いかける作品になるでしょう。また、2025年が放送事業開始から100年の節目であることも、国内メディア産業の礎を築いた蔦重をフィーチャーする必然性と言っていいのかもしれません。
主人公やジャンルの選択だけでなく、江戸時代中期や遊郭・吉原が舞台の作品は大河ドラマ初であるなど、挑戦的な作品である様子がうかがえます。
人間ドラマ重視の作風は「光る君へ」からの継続
そして忘れていけないのは、脚本家・森下佳子さんの存在。これまで「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「とんび」「天皇の料理番」「義母と娘のブルース」「天国と地獄~サイコな2人~」(すべてTBS系)、「ごちそうさん」「おんな城主 直虎」(NHK総合)などのヒット作を手がけてきた、業界人・視聴者ともにファンの多い脚本家であり、「べらぼう」にとって何よりの“品質保証”と言っていいでしょう。
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