2025年、日本がもっと「後進国になる」根本理由 10年間、時計の針が止まった日本の末路
東洋経済オンライン / 2025年1月5日 10時0分
すると、この8年間、液晶パネルの生産は、変わりなく続けられていたわけだ。この記事の見出しは、「遅すぎた撤退」というものだった。シャープの社内では、8年間、時計が止まったままだったのだろうか?なお、2024年12月には、堺工場の一部がソフトバンクに売却されたと報道された。
日本が変わらないことを痛感した3番目のニュースは、日本銀行が、12月19日、過去25年間の金融緩和策を検証する「多角的レビュー」を公表したことだ。2013年に導入された異次元金融緩和政策について、「導入当初に想定していたほどの効果は発揮しなかった」とした。
しかし、これは、いま初めて明らかになったことではない。導入して2年後の2015年に、すでに明らかになっていたことだ。
異次元金融緩和政策は、2年間で政策目標を達成するとしていたのだから、失敗であることは、2015年の時点で明らかになっていた。だから、2015年で「多角的レビュー」を実施し、その時点で終了とすべきだった。
しかし、実際にレビューが行われたのは、その約10年後だった。この間の約10年間の歳月は、失敗した金融政策に固執しただけだったと言わざるをえない
物価上昇率は、2021年まで2%を超えなかった。仮に超えたとしても、日本経済を活性化することはなかっただろう。
2022年以降の物価上昇率2%を超えたが、それは異次元金融政策のためではなく、世界的なインフレが輸入されたためだ。しかも、低金利に固執したため、異常な円安が生じ、物価高騰で日本の消費者の生活は貧しくなった。
日本銀行の行内では、10年間、時計が止まったままだったのだろうか?
日本は「ますます、ますます不思議になる」
『不思議の国のアリス』で、不思議の国に迷い込んだアリスは、curiouser and curiouser(ますます不思議になる)という有名な言葉を発している。日本経済の過去10年間を振り返ると、この言葉は、日本が抱える諸問題に対する日本政府や日本銀行の対応ぶり(あるいは、不対応ぶり)と、政権が次々に打ち出す奇妙な標語(例えば「新しい資本主義」)を予見し、それを形容する言葉としてキャロルが創作したものではないかと思えてくる。
仮にキャロルが生きていて日本の状況を見たら、これを修正して、curiouser and curiouser,and more and more curiouserと言ったのではあるまいか?
野口 悠紀雄:一橋大学名誉教授
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