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アクティビスト銘柄で顕在化する「後始末リスク」 手元資金が急減し、巨額還元の撤回も困難に

東洋経済オンライン / 2025年1月6日 7時30分

東洋証券は、大盤振る舞いの株主還元により株価が上昇したことでアクティビストから一部株式の買い取りに成功したものの、手元資金が大きく減り今後の成長戦略に「黄色信号」が灯る(記者撮影)

大規模な株主還元がアクティビスト(物言う株主)の退場を促したのかーー。

【図表】大規模な株主還元で、株価は1年前と比べて一時倍以上の水準に

2024年6月の株主総会で一部の大株主から社長(当時)の再任案に反対され、トップ交代に追い込まれた中国地方を地盤とする中堅の東洋証券。UGSアセットマネジメントなどのアクティビストが30%程度の株式を握っていたが、12月18日にその一部を買い取ることに成功した。

同日に行ったのは「自己株式立会外買付取引」(ToSTNeT-3)による自己株式の取得だ。前日の終値607円で1317万株、総額80億円の株式を買い取った。発行済み株式総数に占める割合は15.8%。大株主のUGSアセットとBe Braveは12月25日に変更報告書を提出。この取引で合わせて約900万株を売却したことを明らかにした。

株式売却を後押しした株価上昇

大株主から株式を買い取ったことで、ひとまず経営の安定性は確保しそうだ。6月の株主総会では、当時の桑原理哲社長の再任案に大株主が反対。選任の見通しが立たないことから総会当日に選任案を撤回した。株主提案の取締役候補は選任されなかったものの、小川憲洋現社長を含めた取締役は賛成率がいずれも50~52%と、薄氷の結果だった。

株主構成に変化がない限り2025年も同様の厳しい株主総会を強いられる可能性が高く、何らかの対応策が必要だった。そこで打ち出したのが大規模な株主還元だ。

2024年10月30日、それまでの中期経営計画を撤回して、新しい中計を発表。併せて2025年3月期からの3年間、毎年50円の配当を支払うことを表明した(2024年3月期は10円配)。必要となる資金は毎年30億円超。この資金確保に向けて、保有する株式や不動産の売却益を計上するものの、配当性向は100%を超える。稼ぎ出した利益以上の株主還元を実施する大盤振る舞いだ。

大規模な株主還元は株価に好影響をもたらした。それまで400円程度だった株価は発表後の11月に入って500円台で安定、下旬には600円台に乗せた。1年前と比べて倍以上の水準だ。

この株高が大株主の「退場」を後押しした。UGSアセットをはじめとするアクティビストが東洋証券の株を買い進めたのは2022~2023年。「いま売却すれば十分な利益を見込める」。そうした判断が大株主に働いたとみられる。

東洋証券は今回の自己株買いについて、「収益見通し、自己資本比率、今後の投資予定等を鑑みて60億~80億円の追加還元は合理的」と説明する。

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