中途採用「前職からのお土産」に潜む重大リスク 安易に「経験を活かして」と言ってはいけない
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 8時50分
雇用の流動化が進むにつれ、退職者・転職者による企業秘密の漏えいリスクが高まっています。企業秘密が持ち出されると自社に損害が生じることは当然ですが、転職者が情報を持ち込んできたときにも法的トラブルが生じ得ることは、知っておかなければなりません。そこで、自社の企業秘密の漏えいを防ぎ、他社の企業秘密を侵害しないために企業がとるべき対応と留意点を解説します。『企業実務』の記事を再構成し、アサミ経営法律事務所弁護士の浅見隆行さんが、前後編の2回にわたって解説します。
軽視できない、企業秘密が「持ち込まれる」リスク
前編では、退職者が「企業秘密」を持ち出し、転職先で使用する場合の対応と対策について解説しました。
自社の「企業秘密」が持ち出されるリスクに比べると、転職者が前職の「企業秘密」を持ち込んでくるリスクは見過ごされがちです。しかし実際に、転職者が「企業秘密」を持ち込んだことで、転職者と中途採用した企業の両方が刑事罰を受けるケースも発生しています。
回転寿司チェーン店K社の元社長が、同業他社であるH社の取締役から退任する直前に、商品原価や仕入価格などの「営業秘密」をアクセス権限のある当時の部下に命じて入手し、転職後、K社の商品企画部長に「営業秘密」をメールで開示し、商品原価の比較データなどを作成させるなどしたケースです。
元社長は、不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)により懲役3年、執行猶予4年、罰金200万円を命じられ、K社も罰金3000万円を命じられました。
なお、「営業秘密」を持ち出すことに協力させられたH社の部下は罰金50万円、元社長から「営業秘密」を開示するメールを受け取り、商品原価の比較データなどを作成したK社の商品企画部長は懲役2年6か月、執行猶予4年、罰金100万円を命じられています。さらに、H社はK社に対して損害賠償請求を提訴しています。
企業は、いま一度、これらのリスクに巻き込まれないための対策を確認しておくことが急務です。
転職者による「企業秘密」の持ち込みを防ぐための方策
(1)転職者による前職の「企業秘密」の持ち込みの法的リスク
転職者が、前職の「企業秘密」を「お土産」として持ち込むことは従来からよく見られてきた光景です。しかし、不正競争防止法が2003年に改正され、前職の「営業秘密」(①非公知性、②有用性、③秘密管理性を満たす技術上または営業上の情報)の不正取得、不正開示は刑事罰の対象となりました。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
絶頂の転職エージェントが衰退する致命的構造 転職活動者にはおおむね好評でも気になる批判の声
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 10時0分
-
資格がなくても転職はできる!? ITや介護など5つの“狙い目職種”で、企業が求める『意欲・コミュ力・適応力』とは
まいどなニュース / 2025年1月7日 20時30分
-
即不採用候補になる「50代エリート」4つのタイプ 人事担当者が"警戒センサーを発動"する人の特徴
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 7時40分
-
退職者による「企業秘密」漏えいを防ぐ4つの方策 「秘密保持契約」を形骸化させてはいけない
東洋経済オンライン / 2025年1月6日 8時30分
-
データ復元は困難?「不正の証拠隠滅」はこう防ぐ 企業が理解すべき「データ消去」の恐ろしい損害
東洋経済オンライン / 2024年12月11日 8時0分
ランキング
-
1中居正広CM削除「ソフトバンクの判断」が正しい訳 「示談してたのに…」は企業には一切関係ない
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 8時40分
-
2キャベツ1玉“1000円超え”も…2025年も値上げラッシュに 閉店危機の飲食店も
日テレNEWS NNN / 2025年1月7日 22時16分
-
3副業収入が300万円を超える月も…早期退職・FIREを達成した会社員から学ぶ、本業と副業を両立するための「甘くない」現実
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月8日 11時45分
-
4絶頂の転職エージェントが衰退する致命的構造 転職活動者にはおおむね好評でも気になる批判の声
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 10時0分
-
5なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月8日 6時10分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください