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「警視庁公安部」が"新設部署"に込めた深い意図 世界を震撼させる「ローンオフェンダー」に関係?

東洋経済オンライン / 2025年1月7日 9時0分

* FBI, (2009), Threat Management for the Lone Offender

過激派組織も気づいた「LO」の利用価値

LO型テロは、その性質上、たとえばアルカイダなどが組織的に行う大規模なテロよりは、被害の程度が小さい。

改めて言うまでもなく、アルカイダによるケニア・タンザニアのアメリカ大使館同時爆破テロ(1998年)やアメリカ同時多発テロ(2001年)は、数百から千人規模での死傷者を出した。こうした、数百人以上の犠牲者を出すようなテロを、LO型が実行するのはかなり困難だろう。

では、なぜそれが世界的な脅威となるのか。

それは、組織的に実行されるテロよりも、情報の秘匿性や突発性が高いことから、LO型ははるかに予防が困難だからだ。

それに、被害の規模が小さいと言っても、ニューオーリンズでの事件では数十人規模、2024年12月にドイツのクリスマス・マーケットで発生した事件では200人以上が死傷するなど、かなりの規模に達することもある。

「摘発の困難さ」と「市民生活に対する脅威の度合い」という掛け算でみると、その重大性は過小評価してはならない。

実際に、2024年のパリ・オリンピックでは、組織的なテロよりもLO型テロのほうが可能性の高い脅威と認識されていた。事実、開会式に前後して鉄道に対する破壊行為が生じたし、オリンピックに先立って凱旋門でハンマーによって人が襲われる事件も起きている。

過激派組織の側も、こうしたLOの“利用価値”に気がついている。

「イスラム国」や「パキスタン・タリバン運動」などの最近の主だったテロ組織は、幹部が無人機などで殺害されるという事態が何度も発生しているため、そもそも「通信すること」を嫌う。

なぜなら組織幹部が攻撃を計画し指示すれば、通信傍受などの手段によって居場所が特定され攻撃を受けてしまうからだ。

そこで、彼らは最近、支持者の“自発的な努力”を訴えることが多い。2023年10月に、ガザ地区での紛争が激化して以降、「イスラム国」はしばしば、「アメリカや欧州でユダヤ人を狙え」などといった漠然としたメッセージを発信している。

それぞれの「『ジハード』を遂行せよ」とのメッセージは、「LO型テロを行え」という訴えにほかならない。

“引きこもり”がいきなりテロを起こすわけではない

それでは、LO型テロに対処する方法はないのだろうか。

そのネーミングゆえに、このタイプのテロは、対人関係を構築するのが苦手な「孤立した人間像」がイメージされやすい。

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