働く人は誰もが知るべき「比較優位」という重要概念 交易が経済発展をもたらしたのには理由がある
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 11時0分
私たちが生きている、かつてないほど豊かなこの現代社会を可能にしたのは、経済の力だ。そして、文明の歴史は経済発展の歴史でもある。では、その経済を、経済学者たちはどのように考えてきたのか。現代の経済学者は何に取り組んでいるのだろうか。
農耕革命から人工知能まで、経済や経済学の発展の歴史をわかりやすく解説する、2024年12月に刊行された『読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
貨幣の持つ3つの機能
多くの古代社会で生まれた発明品のひとつに、貨幣がある。貨幣は次の3つの機能を持つ。
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(1)さまざまな品物の価値をいい表す「尺度」としての機能。貨幣があれば、牛2頭には斧1本の価値があるとはいわず、どちらも銀貨1枚の価値があるといえる。
(2)富を腐ったり、死んだりしない形で蓄えておける、価値の「保存」手段としての機能。
(3)「交換」の手段としての機能。貨幣を使えば、牛2頭を買いたいが、それと交換する斧を持っていないという人どうしのあいだでも、容易に商取引ができる。
貨幣はさまざまな形態で誕生した。古代ギリシャでは、前700年から前600年頃、のちにドラクマ(「ひとつかみの」の意)と呼ばれるようになる硬貨が発行された。
古代オリンピックの勝者には、オリーブの葉で編まれた冠のほかに、最高1000ドラクマの賞金が贈られたという。
ローマで貨幣が発行されるようになったのはそれより遅いが、前269年、ユーノー・モネータ神殿の近くで銀貨の鋳造が始まると、その銀貨には「モネータ」の文字が刻まれ、それが今の「マネー」の語源になった。
硬貨は小袋に入れて持ち歩くことができ、日々の買い物の支払いにとても便利だった。
拡大を続けるローマ帝国の領土には、ローマの硬貨があまねく行き渡った。人々は硬貨に刻まれた皇帝の肖像を見て初めて、新しい皇帝の即位を知るということもあった。
とはいえ、貨幣の形態は硬貨だけではない。ミクロネシアのヤップ島では、加工した石が貨幣(石貨)として使われた。この石貨の大きさはいろいろで、最大のものは直径が3.6メートルもあった。
所有者が代わっても、石貨を移動することはなかった。石貨はいつも同じ場所に置いておき、代わりに、所有者の変更が島の全員に伝えられた。
したがって、この大きな石の貨幣は商取引には不便だったが、必ずしも特殊な方法というわけではない。
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