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「気づきを邪魔する」認知バイアスを自覚できるか 「二酸化炭素の排出抑制は地球のため」は本当か?

東洋経済オンライン / 2025年1月8日 15時30分

「認知バイアス」「身体・感情」「コンテクスト」。観察を阻むことのあるこの3つの要素から、無意識下で必ず影響を受けてしまう(写真:zon/PIXTA)

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』はじめ、編集者として数々のヒット作を生み出してきた佐渡島庸平氏は、「人は見たいものだけ見ている」と説きます。本稿では、同氏の最新著書『観察力を高める 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』より一部抜粋のうえ、物事を見る目を歪める“メガネ”「認知バイアス」についてご紹介します。

人は自分が見たいものだけ見ている

「俺の敵はだいたい俺です」

『宇宙兄弟』の中で、ムッタのこんな台詞のシーンがある。

ライバルと競い合うのではなく、自分にできることをやるしかない。ムッタの台詞をそんなふうに受け取るのが一般的だ。

しかし、観察について思考し、バイアスをふまえて考えれば考えるほど、この台詞の深さを感じずにはいられない。この世界を正しく認知し、行動するのを妨げているのは、まさに自分自身の脳なのだ。自分とどう向き合うか。それが結局のところ、全てだ。

自分の存在自体が、気づきを邪魔している身近な例が、最近あった。僕には3人の息子がいる。息子を見ていると、遺伝子のすごさをまざまざと感じる。

というのも、僕の父と息子がまったく同じ表情をするのだ。眉のひそめ方などの、ちょっとした表情がまったく同じ。一緒に住んでいるわけでもないのに、こんなところが似るなんて! しかも、僕を通り越して隔世遺伝するなんて! と驚いていた。

コロナ禍でオンラインの会議が増えた。写真ではなく表情の動く自分の姿を見て、僕は当たり前のことにやっと気がついた。父と息子が、隔世遺伝で似ているわけではない。僕と父が似ていて、僕と息子が似ているだけなんだ、と。

自分を観察の対象に入れるのは、本当に難しい

こんなシンプルなことに気づくのに、どれだけ時間がかかったことか。これまでもいろいろな人から、父と僕は似ていると言われてきたが、僕自身は、周りが思うほど似ていないと勝手に思っていた。自分の仕草は、動画で撮って見たりしない限り、その特徴を自分では認識できない。自分という存在を観察の対象に入れるのは、本当に難しい。

僕ら自身が観察する主体であるとともに、観察される対象の一部でもある。だから自分の存在を客観的に観察するのは難しい。それを実感する事例は他にもある。そこかしこで耳にする、「地球に優しく」という趣旨の自然保護の活動だ。

自然保護は大切だし、二酸化炭素の排出量を抑えることも大切だ。しかし、それは人間のために大切なのであって、地球のためではない。地球の長い歴史を見ると、動物だけでなく植物ですら、新参者だ。

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