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北九州「水素・アンモニア拠点」でみた期待と不安 「3兆円補助金」で浮かび上がる燃料活用の現実と課題

東洋経済オンライン / 2025年1月8日 7時50分

日本コークス工業にとって同プロジェクトに参画する意義は大きい。

前述のように北九州事業所には4つのコークス炉があるが、そのうち2つは操業から50年以上経過した老朽炉。補修を繰り返しながら稼働させている。プロジェクトが始まれば、操業や設備のメンテナンスなどを同社が担うことになる。

同事業所の坂田竜治所長は期待感を示す。「コークス事業は将来、2炉体制に収斂していくことになる。水素やアンモニアの供給拠点が工場内にできれば、縮小していくコークス事業に代わる新たな収益の柱ができる」。

アンモニアは事業所の私設バースで荷揚げする。5キロ圏内にひしめく周辺需要家には、地中にはりめぐらしているパイプラインの経路をたどって最短距離で水素・アンモニアを供給できる。これまで通常のアンモニアを輸入し化学品メーカーなどに供給してきたことで、扱いにも熟練している。

問題は既存燃料との価格差

需要家側では、九州電力が建設中(2025年度末稼働)の「ひびきガス火力発電所」で水素混焼させるほか、まもなく設備更新を迎える新小倉ガス火力発電所でも混焼を検討する。また、九州製鉄所内の戸畑共同火力発電所では石炭の一部をアンモニアに切り替えることが検討されている。

「水素混焼した電気は、再エネや原子力由来の電力と同様、カーボンフリー扱いになり、需要は今後高まっていく。ただ現状は、価格や量の面で不透明性があり、志をともにする皆さんと供給網を構築していくことが必要だ」。九州電力エネルギーサービス事業統括本部の足立大輔グループ長はそう話す。

北九州市グリーン成長推進課の福田武日児係長は、「北九州は海外に製品を数多く出荷する企業が集積する地域。工場の熱源の脱炭素化を進めなければ製品が売れなくなるという危機感が非常に強い」と強調する。

しかし、政府の試算によれば、水素の単位あたりの価格は天然ガスの10倍以上、アンモニアは石炭の約3倍だ。この価格差を埋めなければ、誰も水素やアンモニアを燃料に使わない。そこで国は価格差を補助する制度を設け、2024年11月下旬から申請受け付けを開始した。

端的にいうと、水素やアンモニアの製造・輸送などにかけた費用に一定の利益を乗せた価格(基準価格)と、既存の化石燃料の市場価格(参照価格)の差額を15年間にわたって補助する制度だ。2030年度までに供給が始まるプロジェクトが対象になる。

基準価格は為替や燃料価格などの変動要因を除いて基本的に15年間一定でなければならない。水素やアンモニアを15年間利用する需要家をセットで申請する必要もある。また、補助期間の終了後10年間は供給を続けることが条件だ。

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