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AI時代にこそ求められる人間のリアルな感覚 子どもの非認知能力は外遊びで伸びる

東洋経済オンライン / 2025年1月9日 11時0分

窪田:見てはいけないわけではありませんが、長時間にわたってテレビやタブレットのような平面のモニターだけを見続けているのは、目の成長には悪影響です。目のことを考えると、やはり外に出て、遠くのものを見ることが大事です。

為末:そうなんですね。コロナ禍を経てリモートワークが増えましたが、人とのコミュニケーションにおいても、対面とモニター越しでは違う気がします。

窪田:おっしゃる通りです。ワシントン大学で教育学を研究している人が、こんな実験をしています。1歳の子どもに1年間、リアルとバーチャルで外国語を教えた場合の習得度の違いを検証したところ、なんと倍以上も差がついたそうです。リアルのほうが圧倒的に習得度は高くなる。

為末:そんなに差があるんですね。

窪田:バーチャルでは最新技術を使い、まさに先生がその場にいるかのようにホログラムで再現されていたのですが、それでもリアルには及ばなかった。だから、どんなに技術が進化しても、再現できないものがあるのです。

特に子どもの場合は、リアルとバーチャルでは受け取る情報の豊かさが全然違います。それだけリアルの経験が、教育に及ぼす影響は大きいと言えます。

為末:なんとなく感覚としては分かっていましたが、研究でも明らかにされているのですね。初めて知りました。

近視の対策で日本が取り残されないために

為末:私がメンバーとして活動している「外あそび推進の会」では、外遊びによって近視の発症を予防することができることや、進行の抑制につながることを発信しています。特に、小さなお子さんたちを育てている同世代の人たちに知ってほしいです。

窪田:日本ではまだまだ「近視になったらメガネをかければいい」と思われていますが、近視は将来的に失明のリスクを高める可能性のある怖い病気です。

2024年9月には米国医学アカデミーから、近視の増加を食い止める必要があると発表されました。世界的に見ても、近視の予防は重要なトピックスになっているのです。

為末:「外あそび推進の会」などで近視の話をすると、ほとんど方が「知らなかった」とおっしゃいます。まだまだ説明が必要なフェーズだなと感じます。

窪田:全米科学アカデミーでは、地球温暖化から量子コンピューティング、AIまでありとあらゆるサイエンスの分野を網羅的に手がけていますが、そこがわざわざ一眼科疾患である近視を取り上げて警鐘を鳴らしている。日本ではそうした報道すらされていないことが、本当に怖いなと。

しかも、日本は近視の有病率が高い国の1つですからね。何十年後かに、日本だけが近視がある国として取り残されないようにしていきたいです。

為末:私も同年代のアスリートや友人知人たちが親になってきているので、彼らにはとにかく子どもを外で遊ばせるだけで近視が防げることを伝えています。

窪田:ぜひこれからも一緒に広めていきましょう。為末さん、今日はありがとうございました。

(構成:安藤梢)

窪田 良:医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

為末 大:元陸上選手

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