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初対面たった数秒で人を判断するのが妥当な理由 人間が太古の時代から培ってきた本能がそこに

東洋経済オンライン / 2025年1月9日 14時0分

私たちは集団内の自分のポジションを守り、長期的な安全を求めている。そのため、そのとき自分がどんな集団にいようと、高い地位の人のそばにいようとするのだ。

実際の能力よりも自信があることが重要視されるのは、そのためだ。私たちが相手を信用するかどうか決めるとき、いちばんの判断材料は、その人が自分の持っている考えや情報をどのように示すか、だ。

その人が落ち着いていて何も不審なところがなければ、こちらは差し迫った危険はないと判断して緊張を解く。

ところが、目を合わせない、不安そうにしているなど不審なところがあると、ワニ脳は危険が迫っていると判断する。常に安全なところにいて危険に備えておくことが、生存の可能性を高める。だから、目の前にいる人物が不審なシグナルを発していたら、私たちは警戒し、その人物を信用しない。

人間には、このような反応が、生物学的プログラムとして組み込まれている。これを頭に入れておけば、ベストな形で人と接することができるだろう。

人と会うときには、次のことを思い出してほしい。第一印象が決まる瞬間も含め、その人と接しているあいだは常に背筋を伸ばし、両足に均等に体重をかけて立とう。また、にこやかな表情でアイコンタクトをとること。そして手のひらを見せるなど、オープンなジェスチャーを使いながら、親しみをこめた口調で話そう。

ある大企業の講演会に参加したときのこと。その講演がはじまったときに見た講演者のふるまいは、いまでもはっきり思い出せるほど強烈に頭に焼きついている。

第一印象と振る舞いで判断される

その講演者の女性は、コミュニケーション・マネージャーだった。彼女は聴衆の前に立ち、腕時計を見下ろしながら緊張した声で言った。「ええと、もう時間は過ぎていますね。はじめないと」。そして開いたドアの向こうに目をやると、こう訊いた。「まだ席についていない人はいますか?」

それから、「今日は何人かゲストに来ていただいていますが、その前にお話ししたいことがあります」と言った。彼女はゲストのほうを見向きもせず、歓迎の挨拶をするわけでもなく、ただゲストが座っているほうに手を差しのべると、何かを払いのけるようにさっと振った。

私は、ゲストの1人だった。その講演者のしぐさは、まるでゲストたちを追い払おうとしているように見えた。私たちゲストは、互いに顔を見合わせた。きっと同じように感じたのだろう。まるでハエみたいに追い払われている、と。

「第一印象」は大切だ。そして、「次にどんなふるまいをするか」も重要だ。出会いの場面での講演者の非言語コミュニケーションは、誰が見ても明らかだった。聴衆のほうをほとんど見なかった。ゲストのいるほうも、ちらりとさえ見なかった。しかも、あろうことかゲストを追い払うようなしぐさをした。

非言語コミュニケーションは、コミュニケーション手段のなかでも最強の手段だ。

レーナ・スコーグホルム:行動科学研究者、講演家、教育者

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