韓国「尹大統領」を逮捕できない捜査当局のお粗末 警察とは足並みが揃わず、ツッコミどころ満載
東洋経済オンライン / 2025年1月9日 18時40分
オ高捜庁長が不退転の覚悟を語ったのは7日、韓国国会で開かれた法制司法委員会の質疑の場だった。
「撃たれても拘束してきなさい。それが、国民が望んでいることだ」「(次の拘束に)失敗したら(高捜庁を)廃止しますよ」
野党議員は脅しともとれるような集中砲火を浴びせ、チョン・チョンレ委員長に至っては、「圧倒的に鎮圧すべき。今回は失敗してはいけないということ」と迫った。メディアに映し出されたその様子は、国会というよりは、さながら捜査司令部のようだった。
野党はなぜここまで尹大統領の拘束にこだわるのか。尹大統領側が、裁判所が発布した令状である以上、執行に応じるべきだろうが、憲法裁判所で弾劾訴追の結果が出た後でも捜査は遅くない。野党がことを急ぐ背景には次期大統領選挙に向けた時間との戦いがある。
今のところ、次期大統領として有力視されているのは共に民主党の李在明代表だ。しかし、李代表には時間がない。
現在、李代表をめぐっては5つの裁判が進行しており、なかでも公職選挙法違反では昨年11月、一審で懲役1年執行猶予2年の判決が出た。このままいけば5月には最高裁まで進むはずで、そこで実刑が決定すれば、議員職の資格を失い、被選挙権は剥奪され、大統領選挙への出馬資格がなくなる。
控訴審の審理は今月23日から始まる予定で、ここで有罪判決が出れば、野党内部でも”李下ろし”が浮上する可能性もある。野党、特に李代表派は、尹大統領が拘束されることにより与党へ打撃を与えられるうえ、弾劾訴追裁判の結果は早ければ早いほどいい。
野党からは、一次の拘束令状の執行に失敗した高捜庁をなくすべきだという声も上がっている。野党議員はその背景を「李代表は公職選挙法の二審の宣告前に次期大統領選挙をしたいという立場で高捜庁の空回りに焦っている。(前任の)文在寅系が作った機関ですから、高捜庁の失敗を李在明系は責任がとれないというわけです」(中央日報、1月8日)と話している。派閥の違う文在寅系の失敗の責任を李在明系は負えないというわけだ。
「空捜庁」と揶揄されるほど成果がない
高捜庁は2021年、検察改革を掲げた文在寅前大統領(共に民主党)の悲願のもと発足した。大統領を含む、高位公職者の主に汚職に関する捜査を担い、検察の力を削ぐ目的で設立されたが、「空捜庁」と揶揄されるほど、これといった実績をあげられていない。
こうした中、昨年12月14日、尹錫悦大統領が弾劾訴追されると、各捜査当局は自身のメンツと存在感をかけて大統領の内乱罪における捜査合戦を繰り広げた。捜査を迅速に行うために、高捜庁と警察庁、国防部は共同の捜査本部を設けたが、庁の存在をみせる千載一遇のチャンスと高捜庁が捜査の前面に出た。
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