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韓国「尹大統領」を逮捕できない捜査当局のお粗末 警察とは足並みが揃わず、ツッコミどころ満載

東洋経済オンライン / 2025年1月9日 18時40分

しかし、最初からつまずいた。

尹大統領側は捜査に応じない理由として挙げるように、高捜庁には内乱罪の捜査権がない。高捜庁法には捜査できる犯罪項目が定められているが、内乱罪は該当しないのだ。この点について今も論争が続いているが、同庁は法の解釈が異なると反駁している。

また、拘束令状を発布したのも、高捜庁の捜査の管轄ではないソウル西部地裁だった。そのうえ、令状に「刑事訴訟法110条(軍事上の秘密と押収)と111条(公務上の秘密と押収)の適用を例外とする」として、物議を醸した。管轄外の裁判所に拘束令状を請求したのは、発布してくれる裁判官を探し歩いたのではないかと批判され、「裁判官ショッピング」と皮肉られた。

尹大統領の弁護代理人は8日の記者会見で。大統領が高捜庁の二次拘束令状の執行には応じない理由をこう説明している。

「(高捜庁の)無効である拘束令状には応じられない。まず起訴をするか、事前拘束令状を請求するならば裁判に応じる。捜査の管轄であるソウル中央地裁が発布した令状であれば応じる」

尹大統領側は、ソウル西部地裁発布の拘束令状について憲法裁判所に権限争議審判と効力の停止を求める仮処分を出していることも明らかにしている。

一方、大統領側につく警護庁長は、「大統領の絶対安全確保が警護庁の存在価値」(東亜日報、1月9日) と語っており、二次執行の際、銃撃戦まで起こるのではないかという不安な声も聞こえてきた。

「人間の底を見ているようでとてもつらい」

この混乱の中、与党「国民の力」の支持率は上昇の気配を見せ始めた。非常戒厳令時には予想もしていなかったこと。野党の大統領への無理な追い込みが保守支持層の結束を生んでいるとも分析され、直近では、野党「共に民主党」37%、与党「国民の力」36.3%と接戦状態になっている(世論調査専門機関「ハンギルリサーチ」1月8日)。

二次の拘束令状の執行はまもなく行われる。高捜庁はその期限について明らかにしていないが、更新という形から前回の7日よりも長いことが予想されている。

こうした様子を見ていると、尹大統領も、与・野党も、そして各機関も自身の保身しか考えていない。保守系の弁護士はこんなことを言っていた。

「非常戒厳から弾劾訴追、そしてこの令状の執行に至るまで、人間の底を見ているようでとてもつらい」

菅野 朋子:ノンフィクションライター

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