駅弁の甲子園で「1日6000個」売れる弁当の中身 全国の有名駅弁を抑え販売個数は「50年連続1位」
東洋経済オンライン / 2025年1月13日 9時0分
さらに、小ぶりなものは通常の2個からプラス1個で3個入っている場合も。手作りならではの味の違いを楽しめるからこそ、森駅の「いかめし」は50年以上も支持を得ているのだ。
比較的リーズナブルな価格設定
駅弁大会で「いかめし」が売れる理由はまだある。ブースを眺めていると、常連の方の「いつも買い」だけでなく、「ついで買い」「まとめ買い」が目立つのだ。
いま駅弁大会の単価は1500~2000円ほど。その中で「いかめし」は、イカの不漁による高騰で何度も値上げを余儀なくされているものの、2025年1月現在も990円で踏みとどまっている。毎年のように各社の駅弁を買い求める人々にとっては「ついでに買っておく定番駅弁」でもあるのだ。
かつ、ミニサイズの小箱が職場への差し入れにちょうどいいこともあり、数箱まとめて買っていく方も多い。待機列に並んでレジに近づいても、さっきまでレジ横にあった山積みの「いかめし」がまとめ買いで消えた、という事態もしばしば。ただし、少し待てば温かい出来立てが出てくる確率が高いで、それはそれでラッキーだ。
各地でよく見る「スルメイカの中にもち米を詰めて炊き上げる」タイプのいかめしは、現在の「いかめし阿部商店」が開発したものだ。なぜ、「いかめし」は森駅の駅弁として誕生し、全国で実演販売を行うようになったのか。その歴史をたどってみよう。
戦前の食糧統制下で誕生
いまの「いかめし阿部商店」の前身である阿部弁当店が「いかめし」を発売したのは、第2次世界大戦中の1941年のこと。食糧統制で米の入手が困難となる中、目の前の海(内浦湾)でとれるスルメイカに生米を詰めて炊き上げることで、米が少なくても食べたあとの満足感がある一品として開発されたという。
この時代は日本が第2次世界大戦に突き進む中、「贅沢は敵だ」のスローガンとともに、「節米運動」が推進されていた。当時の駅弁は、海苔巻き・にぎり飯など具でボリューム感を出せるものや、米飯の部分にふかし芋を詰めたものなど、米の使用量を抑えようと工夫したものが目立つ。
戦後も長らく、「いかめし」は森駅のホームで販売(立ち売り)されていた。昭和20年代・30年代は函館~札幌間が急行「アカシア」「大雪」などで5時間以上、直通の普通列車で10時間以上もかかり、列車内で長時間を過ごす乗客は、ホームで買う駅弁を必要としていたのだ。
かつ森駅は「いかめし」が名物商品として早くから評判になったこともあり、繁忙期には地元の高校生をアルバイトの売り子として総動員していたという。現在の「いかめし阿部商店」今井麻椰社長も、子供の頃にホームで「いかめし」を販売したことがあるそうだ。
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