2025年の中国経済、回復の鍵は「構造問題」にあり 「財政刺激だけでは不十分」とエコノミスト指摘
東洋経済オンライン / 2025年1月14日 16時0分
目下の中国経済には減速方向への圧力がかかり続けている。この状況を打開するため、2025年のマクロ経済政策はどうあるべきだろうか。
【写真】中国のコンテナ海運大手、中遠海運控股の大型コンテナ船
「単純な財政刺激を通じて中国経済を立て直すのは困難だ」。野村グループの中国担当首席エコノミストを務める陸挺氏は、同社が2024年12月20日に開催したメディア向け説明会でそう指摘した。
陸氏によれば、中国経済が抱える問題の本質は(財政刺激の効果が大きい)典型的な需要不足ではない。不動産不況の長期化がもたらした負の連鎖反応や、より複雑化した地政学的な環境変化など、中国経済が直面する構造的問題(への対応策)を同時に考える必要があるという。
不動産不況の長期化が重荷に
「仮に景気サイクルに伴う周期的な不況なら、ケインズ経済学の理論に従って金利を下げ、財政支出を増やすことで経済を回復軌道に導ける」
陸氏はそう前置きしたうえで、目下の中国経済に伝統的な景気刺激策が効きにくい理由を次のように解説した。
「中国の不動産セクターは、一時はGDP(国内総生産)の約4分の1を生み出し、(公有地の払い下げを通じて)地方政府の財政収入の4割近くを占め、中国国民の総資産の7割近くに達していた。その大幅な縮小が2021年から長期にわたり続いている。このことは、中国経済が周期的な景気後退ではなく、構造的要因による不況に直面していることを示している」
不動産不況の長期化は、1つの問題が新たな問題を呼ぶ負の連鎖を中国経済にもたらしている。中でも深刻なのが、地方政府の土地売却収入の激減が地域経済に与える影響だ。
中国財政省のデータによれば、2024年1月から11月までに実施された公有地の払い下げに伴う財政収入は、2021年の同じ期間の半分未満だった。
「土地売却収入の減少により、地方政府は(インフラ投資などへの)財政支出の削減を迫られ、総需要の縮小を招いた。さらに、地域経済に対する地方政府の関わり方が(財政支出を通じた)『支え手』から(徴税強化などによる)『収奪の手』に変わり、地域経済の活力を損なっている」(陸氏)
トランプ政権発足も打撃に
陸氏はさらに、アメリカでの第2次トランプ政権の発足が中国の輸出に与えるインパクトを過小評価してはならないと指摘した。
中国製品に対するアメリカ政府の関税引き上げに対応して、中国企業は生産拠点の(東南アジアやメキシコなどへの)海外移転を進めた。だが、第2次トランプ政権はこうした“迂回輸出”に厳しく対処すると見られる。
また、「Temu(テム)」などの越境EC(電子商取引)サイトは、個人宛て小口貨物の関税を免除するアメリカの特例措置を利用して対米輸出を急拡大させた。しかし今後は、特例の見直しや通関手続きの複雑化などの不確実性に直面する可能性が高い。
「アメリカの政権交代が中国経済に与える影響は、関税の問題だけにとどまらない。アメリカが自国のサプライチェーンから中国を排除する動きを強めることで、海外から中国への直接投資が減少し、中国の科学技術の進歩や産業の発展にも影を落としかねない」。陸氏はそう警鐘を鳴らした。
(財新記者:範浅蝉)
※原文の配信は2024年12月23日
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