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メタの"ファクトチェック廃止"がもたらす変化 誤情報拡散と表現の自由、ネット社会はどこへ向かう?

東洋経済オンライン / 2025年1月14日 8時20分

ファクトチェック廃止後、本当にこの仕組みは機能するのだろうか?

ファクトチェックに潜むジレンマ

ファクトチェックに対するメタの取り組みは、リベラル勢やメディア側からは歓迎されたが、保守派やトランプ支持者などからは「検閲」「言論弾圧」として批判を浴び続けた。

メタが実施したファクトチェックは「正しい情報と誤った情報を分け、ユーザーに注意喚起し顕在化を避ける」というもので、決して“消去”するものではない。

しかし、政治的な争点を含む発信となると、そこには論争が起きやすい。思想によって「何が正しく、何が誤りか」の境界は変化し、社会的合意を形成しにくいのはどの国でも同じだろう。

ヘイトスピーチや明確な誤情報を放置すれば、社会的混乱や人権侵害につながりうるのは明らかだが、一方で正当な意見を誤って封じ込めらることもあり、封じ込められた意見を再び“正当なものとして復元”することは難しい。

ファクトチェックによって一度“危険情報”と認定されると、それが誤認だったと後に判明しても投稿者は失った信頼を取り戻すことが困難になる。発信者は意図の正当性を訴える機会なく、SNS上で「抹殺」されてしまう恐れがある。

さらに本当に信頼感のあるファクトチェックを実施するには、国や地域・文化・言語の違いといった膨大な背景情報を理解しなければならない。特定の国で通用する常識が他の国では的外れということは珍しいことではない。

こうした背景を踏まえると、専門家によるファクトチェックには当然ながら限界がある。単に事実関係を確認するだけでなく、発言のコンテクストや文化的背景、複雑な表現のニュアンスなどを誤解する可能性は拭えない。

それでもファクトチェックを導入していたのは、“他に置き換えられない”重要な役割を担っていたからにほかならない。

ザッカーバーグ氏は第三者のファクトチェッカーは「政治的に偏りすぎている」と批判し、「表現の自由をめぐる我々の原点に戻るときだ」と断じたが、そうであるならば“ファクトチェックに代わる何か”が必要なことは自明だ。

コミュニティノートは有望だが不完全

もっとも“現時点で”、コミュニティノートが理想的に機能するとは思えない。メタの動きが急進すぎて、システムの開発が追いついていないように思える。

メタはトランプ次期大統領の就任基金に100万ドルを寄付し、国際問題担当責任者をリベラル色の強い人物から、保守派の共和党員に交代させた。さらに、トランプ氏と親密な関係にある総合格闘技団体UFCの代表を取締役に迎え入れるなど、保守勢力へと幹部を刷新している。トランプ氏自身も「メタは大きな進歩を遂げた」と発言しており、メタ側が“次期大統領の歓心を買う”ための一環であることがうかがえる。

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