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「金利ある世界」で一つの「財政の神話」が終わった 国債の利払い費が増加に転じ、政策的経費を圧迫

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時0分

もし過去に負ったこの借金の利払いがなかったならば、文教及び科学振興費や公共事業関係費の年間予算を倍増できたのに、というわけだ。

「税収を国民に還元せよ」とはいうものの…

とはいえ、負った借金は帳消しにはできない。利払いが滞れば国家の一大事だから、利払い費は他の政策的経費よりも優先して計上しなければならない。利払い費に回る金額が多くなるほど、政策的経費は圧迫されてしまう。

利払い費をこれ以上増やさないようにするには、毎年度こつこつと新たに負う借金を減らしてゆくしかない。では、2025年度予算政府案での国債発行はどうなったのか。

税収が増える見込みであるため、国債発行は減る見通しである。2025年度予算案での一般会計税収も、過去最高を更新した。税収は78兆4400億円と、2024年度当初予算より8兆8320億円増える見込みだが、2024年度補正後予算ベースでは73兆4350億円だから、それと比べると5兆0050億円ほどの増加ということになる。

そのうち2.3兆円は2024年の定額減税を取りやめることで税収が回復し、いわゆる「103万円の壁」の引き上げ等で所得税が6750億円減ることを含み込んだものだから、税収の実質的な増加は2024年度補正後予算ベースと比べて約3.4兆円、4.6%増となっている。

政府は、2025年度の物価上昇率を2%と見込んでいるから、実質的な税収増は2.6%にとどまる。その増収のうち、1.2兆円は法人税からのもので、消費税や所得税(定額減税分を除く)の増加を上回っている。

税率を上げずとも増える自然税収が大きいのだから、それは国民に還元せよというが、消費税や所得税の増加はさほど大きくない。しかも、ここでさらに減税すれば、需要を刺激して物価上昇圧力を高めることになる。結局、賃金上昇が物価上昇を上回りにくくなって悪循環となる。

公債依存度が27年ぶりに25%を割った画期的予算

この過去最高の税収を背景に、一般会計の国債発行は28兆6490億円と、2024年度当初予算よりも6.8兆円減らせる見込みである。これにより、歳出総額に対する国債発行額の比率である公債依存度は、2025年度予算政府案では24.8%となっている。

24.8%という公債依存度は、歳出の元手を借金に頼る割合は4分の1を割るところまで下がっていることを意味しており、25%を下回るのは当初予算ベースでは1998年度以来のことで、画期的である。

「こんなに国債発行を減らせるなら減税せよ」というのは将来の国民(もちろん今を生きる国民も含まれる)の税負担を増やすことに他ならない。税収が好調であるうちに国債発行を抑えることで、前述した利払い費をこれ以上増やさないように抑えることができ、将来の税負担を抑え、政策的経費に財源を回す余地を広げることができる。

石破内閣は、この予算案をどのように通してゆけるだろうか。

土居 丈朗:慶應義塾大学 経済学部教授

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