「ハイエクとケインズ」不況に対する相反する見方 まったく対照的だった経済学者の巨人の素顔
東洋経済オンライン / 2025年1月16日 12時0分
私たちが生きている、かつてないほど豊かなこの現代社会を可能にしたのは、経済の力だ。そして、文明の歴史は経済発展の歴史でもある。では、その経済を、経済学者たちはどのように考えてきたのか。現代の経済学者は何に取り組んでいるのだろうか。
農耕革命から人工知能まで、経済や経済学の発展の歴史をわかりやすく解説する、2024年12月に刊行された『読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
ケインズによる「蜜蜂の群れ」の例え
英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズは大恐慌の問題を研究し、問題が起こるのは人々が予期せぬ仕方で互いに影響し合うからだと論じた。
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彼はそれを蜜蜂の群れの例で説明している。蜜蜂の群れの中に質素な生活を送ろうとするメンバーが現れたとする。質素な生活を心がけるというのは感心なことのように思える。
ところが、ある蜜蜂の消費とほかの蜜蜂の生産とは密接に結びついているので、消費しないメンバーが増えれば、群れはやがて崩壊し、その樹洞に暮らすすべての蜜蜂が苦境に追い込まれる。
こういう状況を避けるためには、政府が(理想では公共事業に)お金を出して、経済を立て直すべきだというのが、ケインズの主張だった。
これは経済学者全員の一致した考えではなかった。中でも最も舌鋒(ぜっぽう)鋭く異を唱えたのは、オーストリアの経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエクだった。
ハイエクは不況を必要悪と見なしていた。ハイエクにいわせれば、危機前の政府の政策が、金利を過度に低下させ、企業に無分別な借金をさせたのであり、危機に直面して倒産したのは、そのような浅はかな企業だった。
不景気は予防できる病気というより、飲みすぎたあとに必ず見舞われる二日酔いのようなものだというのがハイエクの考えだった。
このふたりの分析からはそれぞれ道徳的なメッセージも容易に読み取れる。
ハイエクにとって、不況とは悪い投資を一掃するものだった。ケインズは不況を不必要な苦しみと見ていた。ハイエクにとって、政府の介入は事態を悪化させるだけのものだった。
ケインズは、経済循環をなだらかにするうえで、政府には果たすべき重要な役割があると考えていた。ハイエクは、民主的な政府が人々の自由を侵すことがあることを懸念する一方、場合によっては、一時的な独裁も必要だと主張した。
まったく対照的だったハイエクとケインズ
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