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鳥羽シェフ「ビジネスでモテる」ための言語化術 相手の「課題」を見つけてあげることも大事

東洋経済オンライン / 2025年1月16日 19時0分

例えば先方の企業が「主力商品の売り上げを、もうちょっと伸ばしたい」というような時。

その企業の売りたい商品が、朝の健康食品だとします。その場合、朝、簡単に作れて、バランスよく栄養が摂れるということが、商品の一般的な特性として挙げられるでしょう。一方で、その「おいしさ」がちゃんと消費者に伝わっていないという可能性がある。

そこで、どのタイミングで、どれくらいの量を、どういう食器とスプーンで食べたら「おいしい」のかを、明確に伝えることができれば、消費者は「味は変わっていないのに、おいしくなった」と感じ、売り上げがグンと伸びる可能性が出てきます。

ある日、すかいらーくの会長から直接、コラボレーションの依頼が届きました。僕のドキュメンタリー映画をたまたまご覧になったらしく、「ガストの命運をあなたに託したい」とおっしゃっていただいたのです。

そこで僕たちが提案したのが「感動ハンバーグ」。

ポイントは、ハンバーグという料理のおいしさを最大化し、さらにコース料理にしたこと。ファミリーレストランでコースが食べられるという感動を、お客様に体験していただくのが狙いでした。

「感動ハンバーグ」というネーミングも、インパクトがあったと思います。キャッチコピーは「ハンバーグで感動したこと、ありますか?」。

ところで皆さんは、ファミリーレストランで一番難しい料理は何だと思いますか?  それはステーキ。ファミリーレストランの場合、単価の安さは譲れません。ステーキはおいしくしようと思うと、いい肉を使うしかない。いい肉は当然高いので、ファミリーレストランでは厳しい。それなのにどこのメニューにも必ずステーキがあります。

僕は、そこはもうほかの料理に置き換えるしかないと思う。僕たちがしたようにハンバーグを前面に押し出してもいいし、ポークやチキンを工夫してもいい。ファミリーレストランにおけるステーキの問題に、僕は早くから気付いていたので、それもまた課題だと思い、ステーキをしのぐ「感動ハンバーグ」の発想につながりました。

感動したら、素直に相手に伝える

ある企業との仕事が決まることは、その企業に「モテた」ということです。そのため、相手の課題を見つける時は、他方で相手を褒めることも大事です。

以前あるファミリーレストランとの仕事の話が来た時、打ち合わせで僕は、そこの蕎麦をものすごく褒めたことがあります。それは本当にめちゃくちゃおいしかったからです。

こういう感動を伝えることが、僕は得意です。なぜなら、僕の料理をお客さんに感動してもらえた時のうれしさを、痛いほど知っているからです。自分の感動は素直に相手に伝えればいい。それはまず相手がこちらに「モテた」ことですが、向こうのうれしさは必ずこちらに返ってきます。つまり、結局こちらが「モテる」ことになります。

そう考えると「モテ」という考え方は、ほとんど万能です。

例えば僕がガストで提供した企画でお客さんが感動したら、ガストがモテたことになる。それはガストにもお客さんにもいいことです。そして僕もまた、お客さんにモテたわけです。その企画が成功したら、僕はもっとガストにモテることになる。

とにかくビジネスでは、相手にどう「モテる」かということを考えればいい。このシンプルな考えに徹すれば、仕事はスムーズに進むし、売り上げは必ず伸びます。

鳥羽 周作:レストラン「sio」オーナーシェフ

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